Tochimoto:Ephedrae Herba

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麻  黄 EPHEDRAE HERBA

麻黄はマオウ科のEphedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer またはEphedra equisetina Bungeの地上茎を基原とする。舐めたときに麻ひ感があり、外観が黄色であることから麻黄と呼ばれている。また麻黄は六陳八新の六陳の一つであり、古いものが好まれる。甘草と並んで麻黄の採集は中国の砂漠化や自然破壊の一因とされ、安定供給に不安がある生薬である。また「違法薬物」である覚醒剤原料に麻黄が使用される経緯から、米国は「違法薬物」の不法輸出の規制を強化するよう関係国に要請した。その要請を受けて中国は、1998年に覚醒剤の原料となる「麻黄類」の輸出規制を強化し、現在では麻黄原形での輸出は完全に禁止されている。ただし麻黄を刻んだものは、麻黄草粉(切断麻黄)として規制の枠から外され、現在も中国から輸入されている。

『日本薬局方 第15改正(JP15)』 麻黄:EPHEDRAE HERBA  Ephedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C. A. MeyerまたはEphedra equisetina Bunge(Ephedraceae)の地上茎と規定されている。

『中華人民共和国薬典 2005年版』 麻黄:HERBA EPHEDRAE  草麻黄Ephedra sinica Stapf、中麻黄Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Mey.あるいは木賊麻黄Ephedra equisetina Bge.の干燥した草質茎と規定されている。

『大韓薬典 第9改正』 마황 麻黄:EPHEDRAE HERBA  초마황(草麻黄) Ephedra sinica Stapf、중마황(中麻黄) Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer または목적마황(木賊麻黄)Ephedra equisetina Bungeの草質茎と規定されている。


【市場流通品と現状】  市場品は草麻黄E. sinicaが主流で、一部プソイドエフェドリン含量の高い中麻黄E. intermediaが流通する。商品規格は基原植物に関係なく「束麻黄」「散麻黄」の2種類に分けられていたが、現在は刻んだ状態の剤形しか輸入できなくなった。束麻黄はきれいに砲弾形に束ね紐でしばったもの、散麻黄は屈曲や枝分かれの多いばらばらのものである。  特殊な麻黄類としては「去節麻黄」「麻黄根」があるがほとんど流通していない。










 調剤用の麻黄として草麻黄と中麻黄がある。その違いは、含有するエフェドリンとプソイドエフェドリンの含量比であり、中麻黄は抗炎症作用が強く、利尿作用に優れているプソイドエフェドリンを多く含む。  当社では、麻黄は六陳八新の六陳の一つであることから、採集後1年以上経過したものを市場に供給している。また漢方エキス製剤メーカーも緑色の強い新物(シンモノ:採集後1年以内のもの)の麻黄は、エキスの色調に影響するので、古物(ヒネモノ:採集から1年以上経過したもの)の黄褐色の麻黄を好む傾向がある。

*近年の中国の麻黄生産および輸入数量(通産省輸出統計より)  1984年ころから中国は草原資源の保護、環境保全を推し進め「退耕還林・退耕還草」の方針を打ち出し、色々な規制通達が出たことにより1996年には麻黄の供給不安がおこり、輸入が増大した。また1998年には麻黄類製品出荷の管理強化が打ち出され1999年~2002年にも輸入量が600トン前後と急増する。  1970年ころはパキスタンから、また1991年まで旧ソ連から輸入されたことがあるが、現在では、麻黄の輸入は100%中国に依存している。また現在、中国政府は日本向けとして300トン/年の上限の輸出枠を設定しており、需要が増大しても中国からの輸入増大は困難な状況である。  

 自然保護といわれながら、2000年の内蒙古自治区だけの麻黄生産量は23,000トンにのぼる。麻黄の輸出規制の目的は、資源枯渇の問題というよりは、むしろ中国のWTO加盟に関連した「麻薬関係の取り締まり」と、黄砂問題に象徴される砂漠の砂を固定する「固砂植物の保護」であると考えられる。

内蒙古自治区2000年全市麻黄草採集区及採集量統計表 旗県市区 採集区 採集量(トン) 科爾泌区 莫力廟蘇木、哈日干吐、慶和郷 100 開魯県 叉和、北清河、俊昌、北興 1,200 扎  旗 巴彦芒哈、道老杜、烏力吉木仁、査嘎吐布 5,000 左  中 花胡碩、珠日河牧場、花吐古拉、哈日干吐、白音花、烏斯図、協代 6,000 後  旗 甘鎮、朝魯吐、伊胡塔、白音毛都、巴胡塔、努古斯台、花灯、烏蘭敦道、 協尓塔拉、哈拉勿蘇、査金台牧場 9,500 庫侘旗 額勒順、茫汗、三家子、庫侘鎮、哈尓稿、六家子、三道、白音花 1,900 合  計 23,700

【生産加工状況】 *中国内蒙古自治区の自生地(草麻黄E. sinica)







*中国甘粛省における加工(中麻黄E. intermedia)













【理化学的品質評価】

TableⅠ 産地別理化学試験 DATA (灰分、酸不溶性灰分、乾燥減量、希エタノールエキス含量)

産地 検体数 灰分 11.0%以下 酸不溶性灰分 2.0%以下 乾燥減量 希エタノール エキス含量 中国ALL 138 7.8±1.0 0.5±0.3 8.6±1.5 28.7±3.6 青海 5 6.7±0.4 0.5±0.2 7.5±1.6 28.0±2.4 甘粛 15 7.1±0.9 0.8±0.4 8.8±1.5 26.9±5.0 内蒙古 37 7.9±0.8 0.5±0.2 8.4±1.4 28.7±2.6 天津 5 7.5±2.1 0.5±0.2 8.0±0.6 27.6±2.0 遼寧 19 8.2±0.9 0.4±0.2 9.2±0.9 29.1±2.4 吉林 14 8.1±0.7 0.6±0.2 8.9±2.4 29.9±1.8 対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)   Mean±SD(%)

○ 灰分 : 遼寧省、吉林省、内蒙古 > 甘粛省、 青海省 ( p < 0.05 ) その他は有意差無し ○ 希エタノールエキス含量 :  吉林省> 天津省、甘粛省 ( p < 0.05 )   吉林省> 内蒙古、青海省 ( p < 0.1 ) その他は有意差無し


TableⅡ 産地別理化学試験 DATA (総アルカロイド(E+PE)、ephedrine、pseudoephedrine )

産地 検体数 総アルカロイド(E+PE) 0.7%以上 ephedrine pseudoephedrine 青海 10 1.44±0.45 0.30±0.36 1.14±0.55 甘粛 19 1.31±0.36 0.50±0.52 0.81±0.34 陜西 9 1.30±0.36 0.66±0.14 0.64±0.26 内蒙古 55 1.30±0.31 0.85±0.24 0.45±0.28 河北 3 1.22±0.13 0.93±0.14 0.29±0.03 天津 4 1.44±0.29 1.03±0.18 0.41±0.12 遼寧 16 1.47±0.31 1.14±0.27 0.32±0.12 吉林 16 1.41±0.27 1.10±0.33 0.31±0.15 黒竜江 9 1.47±0.37 0.93±0.27 0.54±0.47

対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)   Mean±SD (%)


Topic

1.産地別 総アルカロイド mean ( ephedrine : 赤,  pseudoephedrine : 青 )














2.去節麻黄


【内部形態:鏡検】 JP15:内部形態についての記載はない。 <生薬の性状>  本品は細い円柱状~だ円柱状を呈し、径0.1~0.2cm、節間の長さ3~5cm、淡緑色~黄緑色である。外面に多数の平行する縦みぞがあり、節部にはりん片状の葉がある。葉は長さ0.2~0.4cm、淡褐色~褐色で、通例、対生し、その基部は合着して、筒状になっている。茎の横切面をルーぺ視するとき、円形~だ円形で、周辺部は灰緑色~黄緑色を呈し、中心部は赤紫色の物質を充満するか又は中空である。節間部を折るとき、折面の周辺部は繊維性で、縦に裂けやすい。  本品はわずかににおいがあり、味は渋くてわずかに苦く、やや麻ひ性である。


・ E. sinica(草麻黄)  ・ E. intermedia(中麻黄)  ・ E. equisetina(木賊麻黄) ○ 茎の鱗片葉

○ 基部

○ 先端部

○ 表皮

○ 表皮拡大

一般的に茎の鱗片葉は2片で1/2分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤が認められる。 一般的に茎の鱗片葉は3片で1/3分裂。茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。 一般的に茎の鱗片葉は2片で1/4分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤は認められない。

・麻黄 <甘粛省> ① ・麻黄 <甘粛省> ② ・麗江麻黄 ○ 基部 ○ 基部

・麻黄 <甘粛省> ③


○先端部

○ 表皮 ・麻黄 <甘粛省> ④ ○ 表皮

○ 表皮拡大 ・麻黄 <甘粛省> ⑤ ○ 表皮拡大

茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。 茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮に非常に多いクチクラ瘤が認められる。

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