Tochimoto:Ephedrae Herba

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Tochimoto-logo.gif出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌

麻黄 (Ephedrae Herba)

Ephedra sinica Stapf 花
Ephedra sinica Stapf 果実
E. sinica
E. intermedia
E. equisetina

麻黄はマオウ科のEphedra sinica StapfEphedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer またはEphedra equisetina Bunge の地上茎を基原とする。舐めたときに麻ひ感があり、外観が黄色であることから麻黄と呼ばれている。また麻黄は六陳八新の六陳の一つであり、古いものが好まれる。甘草と並んで麻黄の採集は中国の砂漠化や自然破壊の一因とされ、安定供給に不安がある生薬である。また「違法薬物」である覚醒剤原料に麻黄が使用される経緯から、米国は「違法薬物」の不法輸出の規制を強化するよう関係国に要請した。その要請を受けて中国は、1998年に覚醒剤の原料となる「麻黄類」の輸出規制を強化し、現在では麻黄原形での輸出は完全に禁止されている。ただし麻黄を刻んだものは、麻黄草粉(切断麻黄)として規制の枠から外され、現在も中国から輸入されている。(より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌

Contents

麻  黄

『日本薬局方 第15改正(JP15)』

  • 麻黄:EPHEDRAE HERBA
Ephedra sinica StapfEphedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer またはEphedra equisetina BungeEphedraceae) の地上茎と規定されている。

『中華人民共和国薬典 2005年版』

  • 麻黄:HERBA EPHEDRAE
草麻黄Ephedra sinica Stapf、中麻黄Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Mey. あるいは木賊麻黄Ephedra equisetina Bge. の干燥した草質茎と規定されている。

『大韓薬典 第9改正』

  • 마황 麻黄:EPHEDRAE HERBA
초마황(草麻黄)Ephedra sinica Stapf、중마황(中麻黄) Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer または목적마황(木賊麻黄)Ephedra equisetina Bunge の草質茎と規定されている。

市場流通品と現状

市場品は草麻黄 E. sinica が主流で、一部プソイドエフェドリン含量の高い中麻黄 E. intermedia が流通する。商品規格は基原植物に関係なく「束麻黄」「散麻黄」の2種類に分けられていたが、現在は刻んだ状態の剤形しか輸入できなくなった。束麻黄はきれいに砲弾形に束ね紐でしばったもの、散麻黄は屈曲や枝分かれの多いばらばらのものである。 特殊な麻黄類としては「去節麻黄」「麻黄根」があるがほとんど流通していない。

調剤用の麻黄として草麻黄と中麻黄がある。その違いは、含有するエフェドリンとプソイドエフェドリンの含量比であり、中麻黄は抗炎症作用が強く、利尿作用に優れているプソイドエフェドリンを多く含む。 当社では、麻黄は六陳八新の六陳の一つであることから、採集後1年以上経過したものを市場に供給している。また漢方エキス製剤メーカーも緑色の強い新物(シンモノ:採集後1年以内のもの)の麻黄は、エキスの色調に影響するので、古物(ヒネモノ:採集から1年以上経過したもの)の黄褐色の麻黄を好む傾向がある。

近年の中国の麻黄生産および輸入数量(通産省輸出統計より)

1984年ころから中国は草原資源の保護、環境保全を推し進め「退耕還林・退耕還草」の方針を打ち出し、色々な規制通達が出たことにより1996年には麻黄の供給不安がおこり、輸入が増大した。また1998年には麻黄類製品出荷の管理強化が打ち出され1999年~2002年にも輸入量が600トン前後と急増する。 1970年ころはパキスタンから、また1991年まで旧ソ連から輸入されたことがあるが、現在では、麻黄の輸入は100%中国に依存している。また現在、中国政府は日本向けとして300トン/年の上限の輸出枠を設定しており、需要が増大しても中国からの輸入増大は困難な状況である。

Tochimoto-Ephedra-麻黄輸入統計.jpg

自然保護といわれながら、2000年の内蒙古自治区だけの麻黄生産量は23,000トンにのぼる。麻黄の輸出規制の目的は、資源枯渇の問題というよりは、むしろ中国のWTO加盟に関連した「麻薬関係の取り締まり」と、黄砂問題に象徴される砂漠の砂を固定する「固砂植物の保護」であると考えられる。

内蒙古自治区2000年全市麻黄草採集区及採集量統計表
旗県市区 採集区 採集量(トン)
科爾泌区 莫力廟蘇木、哈日干吐、慶和郷 100
開魯県 叉和、北清河、俊昌、北興 1,200
扎旗 巴彦芒哈、道老杜、烏力吉木仁、査嘎吐布 5,000
左中 花胡碩、珠日河牧場、花吐古拉、哈日干吐、白音花、烏斯図、協代 6,000
後旗 甘鎮、朝魯吐、伊胡塔、白音毛都、巴胡塔、努古斯台、花灯、烏蘭敦道、
協尓塔拉、哈拉勿蘇、査金台牧場
9,500
庫侘旗 額勒順、茫汗、三家子、庫侘鎮、哈尓稿、六家子、三道、白音花 1,900
合  計 23,700

生産加工状況

中国内蒙古自治区の自生地(草麻黄E. sinica

中国甘粛省における加工(中麻黄E. intermedia

理化学的品質評価

産地別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)
産地 検体数 灰分
11.0%以下
酸不溶性灰分
2.0%以下
乾燥減量 希エタノール
エキス含量
中国ALL 138 7.8 ±1.0 0.5 ±0.3 8.6 ±1.5 28.7 ±3.6
青海 5 6.7 ±0.4 0.5 ±0.2 7.5 ±1.6 28.0 ±2.4
甘粛 15 7.1 ±0.9 0.8 ±0.4 8.8 ±1.5 26.9 ±5.0
内蒙古 37 7.9 ±0.8 0.5 ±0.2 8.4 ±1.4 28.7 ±2.6
天津 5 7.5 ±2.1 0.5 ±0.2 8.0 ±0.6 27.6 ±2.0
遼寧 19 8.2 ±0.9 0.4 ±0.2 9.2 ±0.9 29.1 ±2.4
吉林 14 8.1 ±0.7 0.6 ±0.2 8.9 ±2.4 29.9 ±1.8
灰分
遼寧省、吉林省、内蒙古 > 甘粛省、 青海省 ( p < 0.05 ) その他は有意差無し
希エタノールエキス含量
吉林省> 天津省、甘粛省 ( p < 0.05 )  
吉林省> 内蒙古、青海省 ( p < 0.1 ) その他は有意差無し
産地別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)Mean±SD (%)
産地 検体数 総アルカロイド(E+PE)
0.7%以上
ephedrine pseudoephedrine
青海 10 1.44 ±0.45 0.30 ±0.36 1.14 ±0.55
甘粛 19 1.31 ±0.36 0.50 ±0.52 0.81 ±0.34
陜西 9 1.30 ±0.36 0.66 ±0.14 0.64 ±0.26
内蒙古 55 1.30 ±0.31 0.85 ±0.24 0.45 ±0.28
河北 3 1.22 ±0.13 0.93 ±0.14 0.29 ±0.03
天津 4 1.44 ±0.29 1.03 ±0.18 0.41 ±0.12
遼寧 16 1.47 ±0.31 1.14 ±0.27 0.32 ±0.12
吉林 16 1.41 ±0.27 1.10 ±0.33 0.31 ±0.15
黒竜江 9 1.47 ±0.37 0.93 ±0.27 0.54 ±0.47

Topic

1.産地別 総アルカロイド mean ( ephedrine : 赤,  pseudoephedrine : 青 )

Tochimoto-Ephedra-topic-1.jpg
Tochimoto-Ephedra-topic-2.jpg

2.去節麻黄

上から、

① 髄部の粉を除いた外皮のみ

② 髄部の粉のみ

③ 節部のみ

④ 去節麻黄(全形生薬から試作)

⑤ 市場品・去節麻黄: PE>E タイプ

⑥ 市場品・去節麻黄: E>PE タイプ

  Tochimoto-Ephedra-topic-3.jpg

内部形態:鏡検

JP15:内部形態についての記載はない。

生薬の性状

本品は細い円柱状~だ円柱状を呈し、径0.1~0.2cm、節間の長さ3~5cm、淡緑色~黄緑色である。外面に多数の平行する縦みぞがあり、節部にはりん片状の葉がある。葉は長さ0.2~0.4cm、淡褐色~褐色で、通例、対生し、その基部は合着して、筒状になっている。 茎の横切面をルーぺ視するとき、円形~だ円形で、周辺部は灰緑色~黄緑色を呈し、中心部は赤紫色の物質を充満するか又は中空である。節間部を折るとき、折面の周辺部は繊維性で、縦に裂けやすい。

本品はわずかににおいがあり、味は渋くてわずかに苦く、やや麻ひ性である。

Tochimoto-Ephedra-cmt454 1.jpg Tochimoto-Ephedra-cmt454 2.jpg Tochimoto-Ephedra-cmt454 3.jpg

<center>

E. sinica (草麻黄)
○ 茎の鱗片葉
E. intermedia (中麻黄)
○ 茎の鱗片葉
E. equisetina (木賊麻黄)
○ 茎の鱗片葉
    Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:草麻黄・折【補正】.jpg     Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:中麻黄・折【補正】.jpg     Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:木賊麻黄・折【補正】.jpg
○ 基部 ○ 基部 ○ 基部
Tochimoto-Ephedra-9902C117(基部)J.jpg Tochimoto-Ephedra-603-C117(基部)J.jpg Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:木賊麻黄【基部】.jpg
○ 先端部 ○ 先端部 ○ 先端部
Tochimoto-Ephedra-9902C117(先端)J.jpg Tochimoto-Ephedra-603-C117(先端)J.jpg Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:木賊麻黄【先端】.jpg
○ 表皮 ○ 表皮 ○ 表皮
Tochimoto-Ephedra-9902C117・表皮×10J.jpg Tochimoto-Ephedra-603-C117・表皮×10J.jpg Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:木賊麻黄【表皮】.jpg
○ 表皮拡大 ○ 表皮拡大 ○ 表皮拡大
Tochimoto-Ephedra-9902C117・表皮×20J.jpg Tochimoto-Ephedra-603-C117・表皮×20J.jpg Tochimoto-Ephedra-☆-090922追加:木賊麻黄【表皮拡大】.jpg

  一般的に茎の鱗片葉は2片で1/2分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤が認められる。  

  一般的に茎の鱗片葉は3片で1/3分裂。茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。

  一般的に茎の鱗片葉は2片で1/4分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤は認められない。

・麻黄 <甘粛省>①
○基部
・麻黄 <甘粛省>②
○基部
・麗江麻黄
○基部
Tochimoto-Ephedra-4561.jpg Tochimoto-Ephedra-4563.jpg Tochimoto-Ephedra-4567.jpg
○ 先端部 ・麻黄 <甘粛省>③
○基部
  Tochimoto-Ephedra-4562.jpg Tochimoto-Ephedra-4564.jpg
○ 表皮 ・麻黄 <甘粛省>④
○基部
○ 表皮
Tochimoto-Ephedra-4571.jpg   Tochimoto-Ephedra-4565.jpg Tochimoto-Ephedra-4573.jpg
○ 表皮拡大 ・麻黄 <甘粛省>⑤
○基部
○ 表皮拡大
Tochimoto-Ephedra-4572.jpg   Tochimoto-Ephedra-4566.jpg Tochimoto-Ephedra-4574.jpg
  • 麻黄 <甘粛省>

  茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。

  • 麗江麻黄

  茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮に非常に多いクチクラ瘤が認められる。

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