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Recommended Terminology for Kampo Products, Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs

このページは日本生薬学会誌に掲載された「漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記」を一部wiki用にまとめて読みやすくして掲載しています。

Reference. 生薬学雑誌 62(2):80-90, 2008 および 63(1):11-21, 2009

医学・医療体系

日本語 English 解説
漢方 Kampo 本来は日本の伝統医学である漢方医学あるいは漢方医学で用いる処方の意味。 蘭方と対比で用いる場合もある。どの意味で用いるのかを考え、Kampo という言葉は単独で用いず、Kampo medicine、 Kampo formulation など語尾に適切な言葉をつけて誤解されないようにすること。 なお、漢方医学の意味で用いる場合には、初出の際に「漢方医学」の項で示すような注釈を付けることが望ましい。

蘭方 Rampo 江戸時代に伝わった西洋医学で、漢方と対をなす言葉。漢方の歴史を表現する場合にのみ Kampo と対にして用い、それ以外は用いない。言葉の注釈としては Western medicine を用いる。

伝統医学 traditional medicine 各民族、各地方で経験的に確立した医学。鍼灸や祈祷など薬物治療以外のものも含む。 WHO/WPRO用語集では "the sum total of knowledge, skills and practice of holistic care for maintenance of health and treatment of disease based on indigenous theories, beliefs and experiences handed down from generation to generation" と定義/解説されている。 traditional medicine という言葉は伝統薬という意味にもなり、用いる際には注意が必要。

東洋医学 Oriental medicine 中国や日本、韓国など東アジアの伝統医学の総称。 WHO/WPRO用語集では "a general term for traditional medicine practiced in East Asian countries, e.g. Japan and Korea" と定義/解説されている。

漢方医学 Kampo medicine 日本の伝統医学の一つ。 WHO/WPRO用語集では "the medicine traditionally practiced in Japan, based on ancient Chinese medicine" と定義/解説されており、必要に応じてこの注釈をつける。 the traditional Japanese medicine という注釈もありうるが、本表現は厳密には鍼灸なども含むので、薬物療法のみを指す場合には注意が必要。

中医学, 中国医学 traditional Chinese medicine 中国の伝統医学。 WHO/WPRO用語集では "the traditional medicine that originated in China, and is characterized by holism and treatment based on pattern identification/syndrome differentiation" と定義/解説されている。 TCM と略す場合がある。

韓医学 traditional Korean medicine 朝鮮半島で発展した伝統医学。 WHO/WPRO用語集では "the medicine traditionally practiced in Korea, based on ancient Chinese medicine, which focuses principally on constitutional approaches" と定義/解説されている。

現代医学 modern medicine 現在の医学。伝統医学と対をなす言葉であるが、漢方医学と対をなすものではない。 漢方製剤は現代医学に含まれる。

西洋医学 Western medicine ギリシア医学を起源とする医学で、東洋医学と対をなして用いる言葉。

代替医療, 補完・代替医療 alternative medicine, complementary medicine, complementary and alternative medicine (CAM) その国の法体系では、正規の医学とは認識されていない医学(通常医療の代わりに用いられる医療)。 漢方は欧米では代替医療となるが、日本では代替医療ではない。 米国ではCAMという言葉がよく用いられる。

原典 original text, original document その処方名が最初に記載された書物。

出典 reference text その処方の生薬の配合量が記載されている書物。


漢方製剤・生薬製剤

日本語 English 解説
漢方処方 Kampo formula 漢方の考え方による生薬の組み合わせ(レシピ)を指す場合に用いる。処方全体を示す場合は Kampo formulae または Kampo formulas を用いる。

漢方方剤 Kampo prescription 医師の指示や処方箋により出された漢方処方。エキス製剤の場合もあれば、煎剤用の刻み生薬の混合物の場合もある。総称で使う場合には複数形にする。

エキス剤, エキス製剤 extract 生薬の浸出液を濃縮して製した中間製剤で、軟エキス剤 (viscous extracts) と乾燥エキス剤 (dry extracts) がある (JP)。包装前のものは extract preparation、包装後のものは extract product などと、どの段階のものであるか、よく意識して使うべきである。

漢方エキス Kampo extract 漢方処方のエキスで、Kampo preparation の一種。抽出液、それを濃縮したもの、完全に乾燥したものまで全ての意味を含むので、どの状態かを厳密に表現したい場合には、それぞれ
  • 漢方軟エキス (Kampo viscous extract: 抽出液を濃縮して水飴様の稠度としたもの (JP)
  • 漢方乾燥エキス (Kampo dry extract: 抽出液を乾燥して、砕くことができる固塊、粒状又は粉末としたもの (JP)
  • 漢方濃縮エキス (Kampo concentrated extract: 濃縮の程度は問わないもの)
など適切な言葉を付けて表す。濃縮の程度を表す場合、JPで規定されている軟エキスや乾燥エキスであれば viscous や dry を付けて表現するが、それ以外の濃縮の程度であれば concentrated を用いる。より詳しく説明する場合には extract based on Kampo formula とする。総称で使う場合には複数形にする。個別の漢方エキスを表す場合には、例えば kakkonto extract と記載する。

原薬エキス bulk extract 漢方製剤の原薬に相当するものは生薬ではなく中間製剤のエキスであり、bulk extractと表現する。

単味生薬エキス single crude drug extract 単一の生薬を水または有機溶媒で抽出したエキスを表す場合に用いる。

漢方製剤(中間製剤),
〃(最終バルク),
〃(最終製品)
Kampo preparation,
Kampo formulation,
Kampo product
Kampo preparationはエキスや刻み生薬の集合体など、漢方製剤に至るまでの中間製品を示す際に用いる。Kampo formulation (包装前の最終製品)の意味でも用いるが、一般的には Kampo preparation を用いることが望ましい。
Kampo formulationは包装前の最終製品を表す場合に用いる。添加物を加えた顆粒や、カプセルにつめたものを指す。
Kampo productはKampo formulation を包装したもので、市場に流通しているものを指す場合に用いる。いずれも総称で使う場合には複数形にする。個別の漢方製剤(最終製品)を表す場合には、例えば kakkonto product と記載する。

漢方エキス製剤(最終バルク),
〃(最終製品)
Kampo extract formulation,
Kampo extract product
Kampo formulation/product がエキスであることを強調したいときに用いる。総称で使う場合には複数形にする。

漢方エキス 顆粒/錠/カプセル Kampo extract granule/tablet/capsule Kampo extract formulation が顆粒や錠剤、カプセル剤であることを強調したい時に用いる。総称で使う場合には複数形にする。

医療用漢方製剤 Kampo formulation for prescription, ethical Kampo formulation 医師が処方する漢方製剤。一般的には Kampo formulation for prescription の方が欧米では理解されやすいが、ethical Kampo formulation もほぼ同義である。現在、わが国の薬事法では漢方製剤は処方箋薬ではないので、厳密にはこれらの表現は正確ではない。
エキスを配合する場合が多く、その場合、医療用漢方エキス製剤 (Kampo extract formulation for prescription, ethical Kampo extract formulation)となる。

一般用漢方製剤 OTC Kampo formulation 一般用漢方製剤の全てが over-the-counter で販売されるわけではないが、一般用漢方製剤を表すのに OTC Kampo formulation という言葉を使用することに通常は問題がないものと考えられる。一方、 Kampo formulation for non-prescription という表現は欧米では理解されやすいが、わが国の薬事法では漢方製剤は医療用も含めて全て 処方箋薬ではないため、正確な表現とは言えない。以上のことを理解した上で、これらの英語表現を用いることが望ましい。 エキス製剤でないものも多数あるが、エキスを配合する場合は一般用漢方エキス製剤 (OTC Kampo extract formulation) となる。

生薬製剤 (A) crude drug product
(B) conventional crude drug product
(A) crude drug product が最も広い意味になり、漢方製剤も含んだ表現になる。 漢方製剤を含めない場合には、 conventional crude drug product あるいは non-Kampo crude drug product を使用する。
(B) conventional crude drug product を用いる場合には (non-Kampo crude drug product) という但し書きを用いると理解させやすい。なお、 conventional drug と言う場合には新規な製剤(例えば徐放性製剤)と対比して用いられる場合が多いが、 conventional crude drug product の場合の "conventional" は漢方と対比して用いている。
コウジン末など1種類の生薬のみからなることを表現する場合には、 single crude drug product とすると明確になる。化学医薬品や添加物など、生薬以外の混合物があることを表現する場合には combination crude drug product としてよいが、その後に with vitamin C のように、何が含まれるかを明確にする。総称で使う場合には複数形にする。

一般用生薬製剤 OTC crude drug product, OTC non-Kampo crude drug product 日本では、生薬製剤の大部分は一般用であることから、一般用生薬製剤は生薬製剤とほぼ同義語となるため、一般用であることを特に強調しないのであれば、生薬製剤と同じ英語表現を用いてもよい。

医療用生薬製剤 single crude drug for prescription, ethical single crude drug わが国においては、医療用生薬製剤は単一生薬のみの製品しかないため、 ethical combination drug containing crude drug preparation のような表現はありえない。

最終製剤 finished pharmaceutical product, finished product 漢方製剤の場合は finished product でも通用する。

浸剤・煎剤 infusions and decoctions 『生薬を、通例、精製水で浸出して製した液状の製剤』 (JP)。漢方の煎じ薬は一種の煎剤であり decoctionと表す。

チンキ剤 tinctures 『通例、生薬をエタノール又はエタノールと精製水の混液で浸出して製した液状の製剤』 (JP)。

流エキス剤 fluidextracts 『生薬の浸出液で, 通例, その1ml中に生薬1g中の可溶性成分を含むよう製した液状の製剤』 (JP)。

工業的製造や自家製剤の作製工程

日本語 English 解説
受入れ acceptance 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造の第一ステップ。受入試験 (tests for acceptance) を行い、生薬、エキスなどの受入規格 (acceptance-specification) や受入基準 (受入判定基準) (acceptance criteria) に適合しているかどうかを判定する。日局生薬であれば日局規格への適合 (conformity to JP) を判断する。

仕込み量 (total) amount of crude drugs for extraction 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造において、 エキス抽出に用いる生薬の総重量 (total amount of crude drugs for extraction)、あるいは各生薬の重量 (amount of a crude drug for extraction)。

抽出工程 extraction (process) 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造や 自家製剤の作製において、生薬の単味あるいは混合物から水などの溶媒によって含有成分を抽出液に移行させる工程。 自家製剤では decoction を用いてもよい。抽出に関係する用語として、
  • 抽出溶媒 (extraction solvent)
  • 抽出温度 (extraction temperature)
  • 昇温速度 (rate of temperature increase)
  • 抽出時間 (extraction time, extraction period)
  • 抽出率 (extraction rate)
などがある。

分離工程 separation (process) 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造や 自家製剤の作製において、抽出液と生薬残渣とを分ける操作。固液分離 (solid-liquid separation) とも言う。煎剤ではこの操作により最終製剤となる。

濃縮工程 concentration (process) 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造において、抽出液の濃度を高める工程。工業的には、減圧濃縮 vacuum concentration が主に用いられる。抽出液を濃縮して水飴様の稠度としたものは軟エキスと言う。

乾燥工程 drying (process) 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造において、抽出液の水分や溶剤を気化させ粉末化する工程。噴霧乾燥 (spray drying) や凍結乾燥 (lyophilization, freeze-drying) などがある。

混合工程 mixing (process) , blending (process) 原材料を混ぜ合わせる工程。漢方製剤の工業的製造において、 エキスに賦形剤 (excipient) などの添加剤 (additive) を加えて均一になるようにする工程。 blendingという言葉は混合というより調合、配合という意味あいが強い。

造粒工程 granulation (process) 固形製剤の製剤化工程の一つで、顆粒剤や細粒剤を作る工程。その他に、錠剤化工程 tableting (process)、カプセル化工程 capsulation (process) などがある。

篩過 (しか) 工程 sieving (process) 一定の大きさのものを選り分ける工程。原料生薬で切度を揃えたり、顆粒剤などの製剤化工程で粒度を揃えたりする場合に用いられる。

包装工程 packaging (process) バルク製剤を容器や被包に充填 (filling) し、表示 (labelling / labeling) して 最終製品にする工程。例えば、漢方製剤 (最終バルク) (Kampo formulation) を 漢方製剤 (最終製品) (Kampo product) にする工程。

出荷 release 漢方製剤、生薬製剤などの工業的製造の最終ステップ。出荷試験 tests for release を行い、出荷規格 release-specification や出荷基準 (出荷判定基準) release criteria をもとに適否判定 judgement を行い、合格したものが出荷される。

試験法

日本語 English 解説
生薬の微生物限度試験法 microbial limits test for crude drugs 『生薬に存在する増殖能力を有する特定の微生物の定性、定量試験法である。本試験法には生菌数試験 total viable aerobic count (好気性細菌と真菌) 及び特定微生物試験 test for the detection of specified microorganisms (腸内細菌とその他のグラム陰性菌、大腸菌、サルモネラ及び黄色ブドウ球菌) が含まれる。試験を遂行するに当たって、外部からの微生物汚染がおこらないように、細心の注意を払う必要がある。また、被検試料が抗菌作用を有する場合又は抗菌作用を持つ物質が混在する場合は、希釈、ろ過、中和又は不活化などの手段によりその影響を除去しなければならない。試料は任意に選択した異なる数箇所 (又は部分) から採取したものを混和し用いる。試料を液体培地で希釈する場合には、速やかに試験を行う。また、本試験を行うに当たっては、バイオハザード防止に十分に留意する。』 (JP)。なお、 JP英文版では、 microbial limit test for crude dugsと limitが単数形になっている。

クロマトフィンガープリント、クロマト指紋 chromatographic fingerprint クロマトグラフィーを用いて、特定成分を定量するのではなく、クロマトグラフィーチャートの全体パターンから、物質の質を判定すること (仲井由宣, GMP・ICH医薬用語事典) 。

生薬試験法 tests for crude drugs 日本薬局方において、生薬総則に規定する生薬に適用する試験法。なお、15局の英語版では〔5〕生薬試験法 tests for crude drugs の中に
  • 〔5.01〕生薬試験法 crude drugs test、
  • 〔5.02〕生薬の微生物限度試験法 microbial limit test for crude drugs
がある。〔5.01〕生薬試験法 には試料の採取 sampling、分析用試料の調製 preparation of the test sample for analysis、 鏡検 microscopic examination、純度試験purity (異物 foreign matterと総BHC及び総DDT: total BHC’s and total DDT's がある)、乾燥減量 loss on drying、灰分 total ash、酸不溶性灰分 acid-insoluble ash、エキス含量 extract content、精油含量 essential oil content の項目がある。

生薬

日本語 English 解説
生薬 crude drug 生薬とは、動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物又は鉱物などを示す (JP)。

刻み生薬 crude drug pieces for decoction JPでは切断生薬という言葉を用いており、刻み生薬とは呼んでいない。切断方法まで表現する場合は cut、 sliced、 powdered、 crushed などをつけるが、 cut と powdered に関しては切度がJP通則で規定される。

切断生薬 cut crude drug 全形生薬を小片または小塊に切断または粉砕したもの、あるいは粗切、中切または細切したもの (JP)。

粉末生薬 powdered crude drug 全形または切断生薬を粗末、中末、細末または微末としたもの (JP)。

原料生薬 (A) raw material (for crude drug)
(B) crude drug (for Kampo preparation)
(A) 農産物としての生薬を指す場合は raw material for crude drug(植物性原料の場合には plant raw material)と表現する。

全形生薬 whole crude drug 動植物の薬用とする部分を、切断せずに乾燥など簡単な加工のみを施したもの。原形生薬とも言う。日本薬局方では全形生薬、切断生薬、 粉末生薬に分類されている。

生薬名 crude drug name 生薬の名称。日本薬局方では日本名 (正名) title name、英名 English name、ラテン名 Latin name、日本名別名 (別名) commonly used name の順で記載される。
  • 例1: ニンジン (正名)、Ginseng (英名)、GINSENG RADIX (ラテン名)、人参 (別名)
  • 例2: センブリ (正名)、Swertia Herb (英名)、SWERTIAE HERBA (ラテン名)、当薬 (別名)

基原 origin, source 「きげん」をコンピュータ上で変換すると、「起源」 (あるいは起原) という漢字が表示される。一方、日本薬局方では、「基原」という漢字を使う。前者は、直接、間接を問わず広くルーツという意味がある一方、後者は、直接的な基原を意味する。「起源」という漢字は、普通、「植物の起源は藻類である」という場合に用いる。従って、起源植物というと、植物の進化の過程を考慮した場合に用いる。一方、生薬の原材料である植物を狭義で意味したい場合には、基原植物を使う。なお、生薬学の研究者の間では後者の意味で「基源」を用いる場合もある。日本薬局方では、 生薬のもととなる動植鉱物 original plants、animals or minerals とその薬用部位を「基原」という言葉で表し、適否の判断基準としている。基原植物という場合、original plant でも意味は通じるが、original plant source of crude drugという表現の方が誤解を受けにくい。

生薬の性状 description (of crude drugs) その生薬の特徴的な要素を記載したもの。局方英語版やWHOのモノグラフでは description と表現されており、外国の局方でも description と書かれる場合が多い。ただし、一般的に生薬の性状を表現する場合には characteristics (of a crude drug) を用いた方がよく分かる。 生薬では「生薬の性状」の項に規定されている、におい odor、味 taste、 鏡検時の数値は適否の判定基準となるが、色 colorは判定基準とはならない。 化学薬品では「性状」は適否の判定基準とはならない。

道地生薬, 地道生薬 genuine medicinal herbs produced at the original place 古来、植物がその土地の土壌や環境に適応して生育し、薬としての評価が定まっている生薬。 WHO/WPRO用語集では“genuine medicinal herbs produced at the original place”について道地藥材 authentic medicinal として紹介しているが、 authentic medicinal を単独で用いると誤解をうけやすいので、上記の定義を入れた後、“authentic medicinal”として用いることを推奨する。

偽品 counterfeit 生薬には基原が定められており、その基原に由来しないものを偽品という。ただし、 counterfeit と言った場合には意図的に加えられた偽物を表す。一方、規格外のものを表現する場合には out of standards もしくは nonstandard を用いる。例えば、ハンゲ中のテンナンショウは counterfeit でもあるが異物 foreign matterでもある。 生薬の偽物であることを強調したければ、 counterfeit crude drug とする。

代替生薬 alternatives to unobtainable crude drugs 植物・動物の分布などにより入手が困難な場合、近い薬効を持つ植物を本来の生薬の替わりに用いる場合がある。例えば、ドクカツ Aralia cordada Thunberg (Araliaceae) はトウドクカツ Angelica pubescens Maximowicz の代替生薬であった。

えぐい acrid 咽を刺激する味を指す。代表的な生薬としてハンゲがある。

薬用植物

日本語 English 解説
薬用植物 medicinal plant WHO guidelines では、 herb は木本も含むと定義しているが、 herb は "any seed-bearing plant which does not have a woody stem and dies down to the ground after flowering" の意味であり (The Oxford English Dictionary) 、木本の樹皮等が含まれなくなるため medicinal herb は厳密には間違いである。

学名 scientific name 国際命名規約に従い、ラテン語で生物の種に付けられる世界共通の名称。学名は属名 generic name +種小名 specific epithet +命名者名 author name で表される。なお、生物によっては亜種 subspecies、変種 variety、亜変種 subvariety、品種 form などを付け加えることもある。なお、栽培品種は cultivar と表現する。日本薬局方では、この後に科名 family name を括弧で示す。属名、種小名、亜種などはイタリック体で表記する。
  • 例1: オタネニンジン Panax ginseng C.A.Meyer (ウコギ科 Araliaceae)
  • 例2: ナツメ Zizyphus jujuba Miller var. inermis Rehder (クロウメモドキ科 Rhamnaceae)

その他同属動植物 other species of the same genus 通例、同様の成分、薬効を有する生薬として用いられる原植物または原動物。なお、15局においては、 生薬総則に「その他近縁植物」、「その他近縁動物」という言葉は残っているが、現在では、熊胆にのみ「その他近縁動物」という言葉が使われており、 15局英語版では「その他近縁」を allied という言葉で表現している。

薬用部位 medicinal part 生薬として用いられる動植物の部位。同じ原植物、原動物を用いる生薬であっても、使用部位によって名称が異なる場合がある。例えば、クコの果実を枸杞子、根皮を地骨皮という。日本薬局方収載生薬では下記のような部位のものがある。

花 flower、頭花 capitulum、花穂 spike、柱頭 stigma、葉 leaf、茎 stem/twig、根 root、根茎 rhizome、塊茎 tuber、塊根 tuberous root、りん茎 bulb、全草 whole herb、果実 fruit、果皮 peel、種子 seed、仮種皮 aril、仁 kernel、樹皮 bark、心材 duramen、樹脂 resin、貝がら shell、菌核 sclerotium、地上部 terrestrial part、地上茎 terrestrial stem、など。
なお、日本薬局方では規定されていないが、ニンジンやブシなどでは下記の表現が使用されることもある。
主根 taproot、枝根(側根) branch root/lateral root、細根 rootlet、子根 daughter root、母根 mother root、など。

産地 place of production, place of collection, place of harvest origin、source などは基原や起源と誤解される可能性があるので使用すべきではない。ここでは名詞形で表現をしているが、 "collected in Shandong Province, harvested in Shandong Province" などと記載する方がわかりやすい。

野生品 wild plant, collected plant, wild resource 動物までを含んで表現する場合は wild resource を用いる。 生薬を指す場合は、 crude drug derived from wild plant などと表す方がよい。

栽培品 cultivated plant, harvested plant 生薬を指す場合は crude drug from cultivated plant などと表す方がよい。

生薬のガイドライン、鑑定

日本語 English 解説
生薬総則 general rules for crude drugs 日本薬局方において、『生薬総則を適用する生薬及びこれらを有効成分として含む製剤、エキス剤、チンキ剤、シロップ剤、酒精剤、リニメント剤、坐剤等の製剤 (ただし、配合剤にあっては、これらを主たる有効成分として含む製剤)を「生薬等」としてまとめ』 (JP)、共通規則を定めたもの

鑑定
鑑別
identification, authentification, evaluation
discrimination

鏡検を用いた形態学的試験 morphological examination、目視検査 visual inspection、macroscopic examination や 色・味・においなど官能試験 sensory test、organoleptic test により、生薬の真偽、優劣などを判断・評価すること。一般的には鑑定という言葉は judgement という言葉を用いる。しかし、生薬の真偽を鑑定する場合には identification あるいは authentification、 生薬の優劣を鑑定する場合には evaluation という英語表現が適切である。鑑定を基に判別することを鑑別 discrimination という。

鏡検 microscopic examination, microscopic identification 日本薬局方・ 生薬試験法〔5.01〕 microscopic examination で規定されている。光学顕微鏡を用いて組織の切片 section を作成し、組織形態学的に観察すること。また粉末生薬においても鏡検が定められている。特に同定を強調したい場合には microscopic identification を使う。

充実している dense in texture 生薬の内面の質が密でつまっていることを表す言葉。 生薬の選品において、品質の良否に用いられることがある。局方ではハンゲとモッコウの性状に使われている。

腊葉 (さくよう) 標本 herbarium specimen いわゆる植物の押し葉、押し花。用いた植物の記録、保証という意味で用いる場合は voucher specimen (証拠標本)を用いる。

生薬の加工

日本語 English 解説
摘芽 (てきが),
摘蕾 (てきらい)
bud picking, disbudding 地下部を用いる生薬で地下部の生長を促すために、花芽を取り除いたり、花を咲かせないように蕾を摘んだりする作業。

摘心 (てきしん) pinching, topping 茎または枝の先端や生長点を摘み取る作業。例えばトウキの根の肥大化のため、茎の新芽をくり抜くことなどに用いられる。

加工調製, 調製加工 processing わが国では、植物・動物・鉱物などを生薬とするために一次加工する意味合いで用いられる。洗浄 washing/cleaning、皮去り peeling、切断 cutting、乾燥 drying、燻蒸 fumigation などを指すことが多い。また、似たような言葉で「修治」があるが、「修治」は生薬の薬効の向上や副作用の低減のための加工法を指す場合が多い。 WHO/WPRO用語集 では、炮製、修治、修事 processing of medicinals を“a general term for treating of medicinal substances by various means before their medical use”と定義/解説している。 WHO's GACP では、加工調製を processing、修治を specific processing としている。

収穫後処理 post-harvest processing WHO's GACP では、採取・収穫後の洗浄から修治までを含む全体の工程を指して用いられている。収穫後の農薬処理も post-harvest processing の一種である。

選別 sorting, removing foreign matters 広義では sorting を用いるが、目視により、金属、石、ビニールひも、頭髪などの異物 foreign matter を取り除くことを指す場合には removing foreign matters を推奨する。

分別 (等級わけ) classification 通例、目視により、生薬をグレード別に分類すること。

汚損 contamination 汚染や混入などにより、生薬の品質が損なわれること。 WHO's GACP では“The undesired introduction of impurities of a chemical or microbiological nature, or of foreign matter, into or on to a starting material or intermediate during production, sampling, packaging or repackaging, storage or transport.”と定義している。汚損物 contaminants と不純物 impurity とは同義ではない。

切断 (切裁) cutting 全形生薬を小片、小塊に切断すること。切裁という言葉は切断 cutting と裁断 cutting をあわせた言葉であるが、業界では、切裁という言葉に破砕 crushing も含めている。日本薬局方では、大きさ/切度 degree of cutting により、粗切 coarse cutting、中切 medium cutting、細切 fine cutting に分けられる。

粉末化 pulverization, powdering 全形または切断生薬を粉末にすること。日本薬局方では、粉末度 fineness of powder により、粗末 coarse powder、中末 medium powder、細末 fine powder、微末 very fine powder に分けられる。

トレーサビリティ traceability 追跡可能性。生薬においては栽培履歴を遡及できる状態にあることを指す場合が多い。

医薬品

日本語 English 解説
伝統薬 traditional medicines, traditional drugs 伝統医学(traditional medicine) で使用される薬物の総称。

漢方薬 Kampo medicines 漢方医学(Kampo medicine) で用いる薬剤全体を概念的に広く表現したい場合に用いる言葉。 漢方医学と誤解される可能性があるため、個別の物質を指す場合には Kampo preparation、 Kampo formulation、 Kampo product など、より具体的で正確な表現を用いるべきである。 なお、漢方薬の原料は植物だけと限らないため、 Japanese herbal medicines という注釈は適切ではない。漢方薬を解説する場合には、まず日本の伝統医学(traditional Japanese medicine) である 漢方医学に触れてから説明を加えるとよい。「漢方医学」の項も参照のこと。

和漢薬 Wakan-yaku 日本で用いられている伝統薬の総称を示す場合に用いる。もともとは日本、中国で用いられる生薬を指していたが、現在は漢方薬も含めた広い意味で用いられている。

民間薬 folk medicine, indigenous medicine, indigenous drug 経験的に民間で使用される伝統的な薬物。体系化されていない。日本ではセンブリなどがこのカテゴリーに含まれる。総称で使う場合には複数形にする。

中薬 traditional Chinese medicine 中医学で用いる薬剤。漢方医学のもとになった古典的な薬剤から、近年の新しい処方(合成薬を含まない)までを含む広い概念を示す言葉。総称で使う場合には複数形にする。 traditional Chinese medicine は中医学の意味でも用いるので、「中医学」の項も参照のこと。

中成薬 traditional Chinese medicinal product 中薬を工業的方法で製剤化した薬物を示すときに用いる。

植物薬 herbal medicine, herbal drug, botanical medicine, botanical drug, plant medicine, plant drug 「植物薬」といった表現は、欧米の "herbal medicine" といった言葉の日本語訳のため、 漢方薬などの日本国内の製品を表現する際にはなるべく用いない方がよい。 herbal medicines は植物薬全体を指す最も広い表現で、 herb (raw materials) そのものから、原料 (herbal materials) 、中間製品 (herbal preparations) 、最終製品 (finished herbal products) までを含む。 herbal materials には精油や herb のフレッシュジュースも含む。植物製品をさす場合には herbal product、生薬をさす場合には herbal drug などと、欧州的表現では使い分ける必要がある。薬の意味で medicine を使う場合には医学と誤解されないような注意が必要である。なお、漢方薬は鉱物性や動物性の生薬を含む場合があり、厳密には漢方薬イコール植物薬とはならない。

植物性医薬品 herbal medicinal product, botanical drug product 活性物質として植物性原薬のみを含む医薬品(最終製品)を示す場合に用いる。鉱物性生薬や、動物性生薬を含む場合には用いない方がよい。植物性以外の生薬や、合成薬が入っていることを表現したい場合には、 finished herbal product を用いる。欧州では herbal medicinal product、米国では botanical drug product を用いた方が理解されやすい。

配合剤 combination drug 化学医薬品では有効成分を2つ以上含む医薬品のことを言う。医薬品添加物は有効成分には含まない。

新薬 modern medicine 伝統薬の対比語になるが、この言葉は現代医学という意味に解釈される可能性もあるので注意が必要である。一方、 new drug という表現は、医薬品の規制現場では申請中の承認前薬物という意味が強く、 伝統薬の対比語としては不適当である。

化学医薬品 chemical drug 単一の化学物質、あるいはそれらの混合物を有効成分とする医薬品を示す場合に用いる。

合成医薬品 synthetic drug 化学合成により製造される医薬品。試薬などの非医薬品は別の概念であり、 chemical reagent と表現する。

調剤用医薬品 drug for dispensing それ自体は法律上の効能・効果を持たず、薬局において医薬品の原料として用いられるもの。

処方

日本語 English 解説
処方箋薬 prescription drug, prescription medicine 医師の診断に基づき処方される医薬品を示す。わが国の薬事法では、処方箋薬は医師の処方箋なしに販売することが禁じられている。 漢方製剤は医療用、一般用ともに処方箋薬には分類されていない。

非処方箋薬 non-prescription drug, non-prescription medicine 医師の処方箋なしに購入できる医薬品を示す。わが国の薬事法では、非処方箋薬という分類はなく、 処方箋薬以外の医薬品を指す通称として用いられる。

薬価収載医薬品 NHI price listing drug NHI は National Health Insurance の省略形。

自家製剤 in-house formulation 工業的に製造された製剤の対語。家庭で製するもの、薬局で製するものがある。薬局で製するものは in-pharmacy formulation(薬局製剤) と表現する。

薬局製剤 in-pharmacy formulation 自家製剤の一つ。病院薬局であれば in-hospital formulation としてもよい。

丸料 ganryo 丸剤である漢方薬を湯剤として用いたことを示す処方名の一部。例えば、八味地黄丸は、本来は生薬を抽出することなく丸剤にしたものであるが、八味地黄丸料は八味地黄丸の構成生薬から作成した湯剤である。 漢方エキス製剤は八味地黄丸という名前であっても、正確には八味地黄丸料のエキス製剤であり、 extract based on hachimijiogan formula である。

散料 sanryo 散剤である漢方薬を湯剤として用いたことを示す処方名の一部。例えば、当帰芍薬散は、本来は生薬を抽出することなく散剤にしたものであるが、当帰芍薬散料は当帰芍薬散の構成生薬から作成した湯剤である。 漢方エキス製剤は当帰芍薬散という名前であっても、正確には当帰芍薬散料のエキス製剤であり、 extract based on tokishakuyakusan formula である。

構成生薬 component Component は構成要素という意味で、最も普通に用いられる言葉である。
「漢方処方」 (Kampo formula) においては、構成要素は配合される個々の生薬であることから、 "Pueraria root is a component of a kakkonto formula. " のように用いる。 "Pueraria root is a crude-drug component of a kakkonto formula." とすると、さらに明確な表現となる。
一方、「漢方エキス製剤」 (Kampo preparation、Kampo formulation、 Kampo product) の構成要素は生薬ではなく、通常、「エキス」 (bulk extract) であり、生薬を「漢方エキス製剤」の component と表現することはできない。 なお、 エキス製剤ではない、生薬末を混合した八味地黄丸の「丸剤」のような場合には "Rehmannia root is a component of a hachimijiogan product." と言うことはできる。

構成(化学)成分 ingredient, constituent 化学医薬品製剤の中の有効(活性)成分を表す場合 active constituent、active ingredient、 active pharmaceutical ingredient (API) (いずれもmedicinal substance:原薬に同義) という用語が汎用される。Ingredient や constituentは、そのものがないと全体が完全なものにならない構成要素というニュアンスがある。このような化学医薬品における言葉の使われ方から、漢方製剤や生薬の構成(化学)成分を示す場合にも、 component を用いるより ingredient, constituent を用いる方が、誤解が少ない。より明確に表現する場合には、 chemical ingredient, chemical constituentとし、 "L-Ephedrine is an active ingredient of a kakkonto product." のように用いる。

(生薬の)配合比率 ratio of crude-drug component 漢方製剤や生薬製剤を製造する時の 構成生薬の重量の比率。「一般用漢方処方の手引き」では単位のない比率で示されているが、日本薬局方に収載されている 漢方エキスでは1日あたりの重量で示されている。(生薬の) 配合量は amount of crude-drug component(s)、(生薬の) 配合理由は reason for crude-drug component (s) と表す。

規格

日本語 English 解説
漢方エキスの日局規格 JP standards for Kampo extracts 漢方エキスの日局規格には下記の記述がある。 (本質 definition)、製法 method of preparation、性状 description、確認試験 identification、純度試験 purity (重金属 heavy metals、ヒ素 arsenic など)、乾燥減量 loss on drying、灰分 total ash、定量法 assay、貯法containers and storage。

日本薬局方外生薬規格(局外生規) non-JP crude drug standards "The Japanese standards for herbal medicines" には局外生規のことを The Japanese herbal medicine codex (JHMC) として紹介しているが、通常、外国人に局外生規を説明するには non-JP crude drug standards の方が理解させやすい。局外生規には herbal medicine 以外の動物生薬も含まれており、こちらの方が正確である。さらに厚生省薬務局監視指導課監修の文献10) では、局外生規のことを Standards for non-pharmacopoeial crude drugs (non-JP crude drug standards) と英訳している。なお、文字数に余裕があるときは The Japanese herbal medicine codex (non-JP crude drug standards) とすることも推奨する。

標準湯剤 standard decoction 標準的な生薬を用い、古典に従って調製した湯剤のこと(昭和57~59年度厚生科学研究事業報告医療用漢方エキス製剤の品質確保に関する研究)。

漢方GMP GMP for Kampo products 漢方GMPには、1987年の「医療用漢方エキス製剤GMP」 (医療用漢方GMPと略される) と1992年の一般用漢方製剤・生薬製剤GMP (一般用漢方GMPと略される) が存在した。日本漢方生薬製剤協会では2005年に改正薬事法に基づき改正し、「漢方製剤・生薬製剤の製造管理及び品質管理に関する自主基準について」 (漢方GMPと略される。 Self-imposed standards for manufacturing control and quality control of Kampo products and conventional crude drug products) に一本化した。この英名は長いため GMP for Kampo products とすることを推奨する。

生薬管理責任者 crude drug control manager 漢方GMPの中に規定されている。

自主基準 self-imposed standards,
self-imposed limit
業界団体が自主的に定めた基準。日本漢方生薬製剤協会には 漢方GMP (GMP for Kampo products) や 残留農薬に関する自主基準 (self-imposed residual pesticide limits) などがある。

社内基準 in-house standards 各企業が自主的に定めた基準。

品質管理指標成分 characteristic constituent (or marker) for quality control 「医療用漢方製剤の取り扱いについて」 (昭和60年5月31日、薬審二第120号通知) で定義されたエキス又は最終製品と 標準湯剤との同等性を確保するための指標となる成分。品質保証の指標にするものであり、有効性・安全性の指標とは限らない。医薬品製造販売指針の英語版では indicator ingredientsという言葉が使用されているが、左記表現を推奨する。このほか使われるのが
  • characteristic marker (for quality control): FDAのガイダンスで使用されている。
  • marker compound for quality control: 一般的に使用されている。
for quality control を付けないと、何のための marker compound か判らず、誤解を招きやすい。また、marker constituent (compound) が天然物化学的にかなり広範囲に分布する化合物(例えばβ-シトステロール等)である場合もあるため、そのようなものでないことを意識して、characteristic を付加する。

その他

日本語 English 解説
健康食品 health food 「健康食品」とは、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指し、保健機能食品 (foods with health claims: FHC) も含むものであり、「いわゆる健康食品」とは、「健康食品」から保健機能食品を除いたものである(「健康食品」に係る制度のあり方に関する検討会、H16年6月9日)。なお、保健機能食品は特定保健用食品 (foods for specified health use: FOSHU) と栄養機能食品 (foods with nutrient function claims: FNFC) から成る。

残留農薬 residual agricultural chemicals,
residual agrochemicals pesticide residues,
residual pesticides
農薬取締法 The Agricultural Chemicals Regulation Law では、農薬 agricultural chemicals (=agrochemicals) を「農作物 (樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。) を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス (以下「病害虫」と総称する。) の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤 (その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。) 及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」と規定している。農薬は、用途によって殺虫剤 insecticides、殺菌剤 fungicides、除草剤 herbicides、殺そ剤 rodenticides、植物成長調整剤 plant growth regulators などに分類される。しかし、一般的な意味では、 agricultural chemicalsは農薬のみならず化学肥料 fertilizers も含むことになり、日本語の示す農薬の意味と完全には一致しない。また、良く用いられる pesticide (殺虫剤と訳される場合が多い) の意味は、 “a substance used for destroying insects or other organisms harmful to cultivated plants” で、植物成長調整剤や、忌避剤 rejectantが含まれないため、これも正確には農薬と同義ではない。一方、 WHO guidelines for assign quality of herbal medicines with references to contaminants and residues では pesticide を“any substance intended for preventing、destroying、attracting、repelling、or controlling any pest including unwanted species of plants or animals” と前述の一般的な意味より広く定義し、残留農薬として pesticide residue を用いている。日本薬局方ではニンジンなどの生薬に、純度試験として総BHC及び総DDTに関する残留基準 maximum residue limit (maximum residue level) が定められている。ただし、生薬中に存在するこれらの物質は、栽培時に使われたものの残留ではなく、土壌汚染に由来するものと考えられる。従って、 agrochemicals であるが、 WHOの分類では、正確には residue (残留物) ではなく、不純物 impurity として取り扱われる。一方、漢方製剤及び生薬製剤に関し 日本漢方生薬製剤協会の自主基準が定められている有機リン系及びピレスロイド系農薬は、実際に使用された農薬に由来するものと考えられるため、 residual pesticidesである。従って、残留農薬を英訳する場合には、このような意味の差を良く理解して、適切な使用をすべきである。

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約 (ワシントン条約) Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES) 野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより、採取・捕獲を抑制して絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかることを目的とした国際条約。 1973年にワシントンで採択されたことから単にワシントン条約とも言う。 生薬の中では、麝香、熊胆、虎骨、犀角、羚羊角、石斛などが国際取引禁止となっている。

生物の多様性に関する条約 (生物多様性条約) Convention on Biological Diversity (CBD)
  1. 地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること、
  2. 生物資源を持続可能であるように利用すること、
  3. 遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること、
を目的として1992年に採択された条約。

民族植物学 ethnobotany 特定の民族の植物伝承、伝承植物に関する学問。

食薬区分 borderline of pharmaceuticals to non-pharmaceuticals 日本において、人が経口的に服用する物が薬事法に規定する医薬品に該当するか否かについて判断する基準のことを食薬区分 borderline of pharmaceuticals to non-pharmaceuticals という。昭和46年6月1日付薬発第476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙に医薬品の範囲に関する基準があり、同基準の直近の改正は平成21年2月20日厚生労働省医薬食品局長通知 (薬食0220001号)「医薬品の範囲に関する基準の一部改正について」である。食薬区分をそのまま訳すと、 borderline of drugs to foods になるが、あくまでも医薬品の範囲に関する基準なのでこの表現は、正確には正しくない。また、英語的には、 borderline between pharmaceuticals and non-pharmaceuticals という表現が自然であるが、薬事法上での規制であることから、意図的に of pharmaceuticals to non-pharmaceuticals が使われている。同基準では、食薬区分は、成分本質 (原材料) nature of raw materials による分類に加え、効能効果 medical claims、形状 (dosage) form、用法用量 dosage and administration の解釈により判断される。成分本質 (原材料) で一義的に医薬品とみなされるとこれまでに判断されたもののリストは、「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) リスト」 the list of raw materials exclusively used as pharmaceuticals として公表されている。
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