Tochimoto:Atractylodis lanceae Rhizoma
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出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌 |
蒼朮 (Atractylodis lanceae Rhizoma)
蒼朮はキク科のホソバオケラ Atractylodes lancea De Candolle またはシナオケラ Atractylodes chinensis Koidzumi の根茎を基原とする。赤朮、仙朮などの別名があるが、根茎の外皮の色が深藍色であることから、蒼朮といわれる。朮の名で神農本草経に記載され、漢方方剤に繁用される重要な生薬である。朮は現在、白朮と蒼朮に区別されているが、中国において陶弘景(452~536年)は市場には「白朮」「赤朮」「東境の朮」の3種があると述べ、元の時代(1271~1368年)までは、色々な朮が流通していたと考えられる。その後、同一処方に蒼朮と白朮が配合されるなど、明確な区別がなされることになった。 日本では日局第6改正(1951年)にオケラ(別名:蒼朮)として「オケラ Atractylodes chinensis Koidzumi の根茎」として初収載された。当時、市場では皮を去ったものを白朮とし、去らないものを蒼朮としていた。日局第7改正(1961年)とその追補で、基原植物が限定され、蒼朮と白朮に分けられた。 (より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌)
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蒼 朮
『日本薬局方 第15改正(JP15)』
- 蒼朮:ATRACTYLODIS LANCEAE RHIZOMA
- ホソバオケラ Atractylodes lancea De Candolle または
- Atractylodes chinensis Koidzumi (Compositae) の根茎と規定されている。
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『中華人民共和国薬典 2005年版』
- 蒼朮:RHIZOMA ATRACTYLODIS
- 茅蒼朮 Atractylodes lancea (Thunb.) DC. あるいは 北蒼朮 Atractylodes chinensis (DC.) Koidz. の干燥した根茎と規定されている。
『大韓薬典 第9改正』
- 창출 蒼朮:ATRACTYLODIS RHIZOMA
- 모창출(茅蒼朮) Atractylodes lancea De Candolle または북창출(北蒼朮)Atractylodes chinensis Koidzumi の根茎と規定されている。
市場流通品と現状
蒼朮には湖北省を中心とする西北地区や西南地区の各省に産する「漢蒼朮」と、河北省を中心に河南省、山西省などで産する「津蒼朮(北蒼朮)」の2種類がある。漢蒼朮は A. lancea で、津蒼朮は A. chinensis とされてきたが、最近の遺伝子解析では市場品の一部が A. lancea と A.chinensis の交雑種とされている。当社が近年に輸入した漢蒼朮の遺伝子解析では、交雑種か A. chinensis で、 A. lancea は見当たらなかった。
漢蒼朮
漢蒼朮には、重質で充実して精油含量が高く結晶が析出するものと、若干軽質で繊維質の結晶が析出しないものがあり、これらを経験的に区別している。しかし精油含量が高くても結晶が析出しないものもあり、外観的な相違点がなく、的確な鑑別が難しい。
漢蒼朮の中に、切断面に「起霜」と呼ばれる綿状の白色結晶が析出するものがある。これを市場では「古立蒼朮(コダチソウジュツ)」と称し、品質が良いと評価されている。これは本草書においても良品とされる。
津蒼朮
津蒼朮には白朮特有の成分とされたatractylonが検出されることから、1987年に東京都薬務課の市場品調査の収去試験で、蒼朮に白朮が混入している不良医薬品であると指摘を受け、津蒼朮は日本の市場から姿を消した経緯がある。 精油含量は少なく、外観的な特徴は白朮に似た不定形の塊状(丸手)あるいは結節状の円柱形(長手)を呈しており、結節状の漢蒼朮とは明らかに違う。
生産加工状況
漢蒼朮(野生)
漢蒼朮(栽培)
蒼朮の資源は枯渇傾向にあり、また採集者の減少などにより、各地において栽培化が進められている。
野生品と栽培品の地下部
理化学的品質評価
規格 | 検体数 | 灰分 7.0%以下 |
酸不溶性灰分 1.5%以下 |
乾燥減量 | 希エタノール エキス含量 |
精油含量 0.7mL/50.0g以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
漢 | 153 | 6.1 ±0.5 | 0.5 ±0.3 | 13.1 ±2.0 | 22.8 ±5.4 | 3.02 ±0.56 mL |
津(&西北) | 11 | 5.0 ±0.8 | 0.5 ±0.3 | 10.9 ±1.3 | 24.5 ±3.2 | 0.94 ±0.24 mL |
- 灰分
- 漢蒼朮 > 津(&西北)蒼朮 ( p < 0.05 )
- 希エタノールエキス含量
- 有意差無し
- 精油含量
- 漢蒼朮 > 津(&西北)蒼朮 ( p < 0.05 )
産地 | 検体数 | 灰分 7.0%以下 |
酸不溶性灰分 1.5%以下 |
乾燥減量 | 希エタノール エキス含量 |
精油含量 0.7mL/50.0g以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
中国・湖北 | 89 | 6.1 ±0.5 | 0.6 ±0.3 | 13.0 ±2.2 | 21.7 ±5.2 | 3.05 ±0.56 mL |
中国・陜西 | 41 | 5.8 ±0.4 | 0.3 ±0.1 | 13.2 ±1.1 | 24.7 ±5.6 | 2.98 ±0.42 mL |
- 灰分
- 中国・湖北 > 中国・陜西 ( p < 0.05 )
- 希エタノールエキス含量
- 中国・陜西 > 中国・湖北 ( p < 0.05 )
- 精油含量
- 有意差無し
形態 | 検体数 | 灰分 7.0%以下 |
酸不溶性灰分 1.5%以下 |
乾燥減量 | 希エタノール エキス含量 |
精油含量 0.7mL/50.0g以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
丸手 | 26 | 5.8 ±0.4 | 0.3 ±0.1 | 13.8 ±1.3 | 25.5 ±5.9 | 3.13 ±0.33 mL |
長手 | 22 | 6.0 ±0.3 | 0.3 ±0.1 | 12.9 ±1.1 | 22.8 ±5.1 | 3.00 ±0.52 mL |
- 灰分
- 長手 > 丸手 ( p < 0.1 )
- 希エタノールエキス含量
- 丸手 > 長手 ( p < 0.1 )
- 精油含量
- 有意差無し
TLCによる成分比較(1987年:各種市場品サンプルで実施:右図) 前述の通り、1987年の指摘以降、輸入前の先行サンプルにおいて、TLCパターンを確認し、原則としてパターンIを選抜して取り扱ってきた。 |
内部形態:鏡検
各種比較
蒼朮(古立・結晶析出多) <中国湖北省> |
蒼朮(古立・長手) <中国湖北省> |
蒼朮(古立・丸手) <中国湖北省> |
蒼朮(西北) <中国西北地区> |
いずれも木部において道管群と繊維群とが交互に存在し、放射状を呈している。皮層、放射組織および髄に油室が存在する。古立、丸手、長手はいずれも内部形態は類似しているが、長手は、丸手に比べて、細いためか髄が小さく、髄に油室が認められなかった。一方、蒼朮(西北)は、個々の木部繊維群が大きく、また、木部繊維群間の道管が放射状に配列していて、蒼朮(古立系)とやや異なる。