Tochimoto:Paeoniae Radix
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出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌 |
芍薬 (Paeoniae Radix)
芍薬はボタン科のシャクヤク Paeonia lactiflora Pallasの根を基原とする。吐錦・冠芳・殿春客・艶友などの別名があり、芍薬(sháo yào)は綽約(chuò yuē)の発音に似ているが、綽約はしとやかで美しいという意味であり、花がしとやかで美しい故に芍薬の名が付いた。芍薬は「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と美しさの形容にも用いられている。
芍薬は「白芍」「赤芍」に区別されるが基原植物の区別ではなく、加工方法あるいは野生種と栽培種の違いと考えられる。基本的には皮去り後に湯通し、または生干ししたものが「白芍」で、野生種の芍薬を皮付きのまま生干ししたものが「赤芍」である。中国の「白芍」は「真芍」とも呼ばれ、皮去り後に湯通ししたもので、昔は奈良県でも生産され、輸出されたことがある。日本の「白芍」は皮去り後に生干ししたもので、中国とは加工方法が異なる。(より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌)
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芍薬
『日本薬局方 第15改正(JP15)』
- 芍薬:PAEONIAE RADIX
- シャクヤク Paeonia lactiflora Pallas (Paeoniaceae)の根と規定されている。
『中華人民共和国薬典 2005年版』
- 白芍:RADIX PAEONIAE ALBA
- 芍薬 Paeonia lactiflora Pall. の干燥した根と規定されている。
- 赤芍:RADIX PAEONIAE RUBRA
- 芍薬 Paeonia lactiflora Pall. あるいは川赤芍 Paeonia veitchii Lynch の干燥した根と規定されている。
『大韓薬典 第9改正』
- 작약 芍薬:PAEONIAE RADIX
- 작약 Paeonia lactiflora Pallas またはその他同属近縁植物(Paeoniaceae)の根と規定されている。
- 中国で栽培される芍薬の主産地は四川省、安徽省である。花の色はピンクの栽培種で、白花はほとんど見当たらない。
- 内蒙古の赤芍は草原に自生する野生種で、その基原植物は P. lactiflora で学名のlacti(白)flora(花)のように、ほとんどが白い花で、わずかにピンクの花が見受けられる。
市場流通品と現状
日本市場に流通する芍薬の商品規格は、産地(日本・中国)や加工調製(皮付き・皮去り・湯通し)、乾燥方法(陰干し・日干し)などの違いにより多岐にわたる。本来、芍薬は赤芍以外の規格は皮去りで加工されていたが、漢方エキス製剤の原料に使用する芍薬の場合は指標成分であるペオニフロリン含量を重視するため、ペオニフロリン含量の高い皮付きが好まれ、皮を去らずに加工する規格ができた。この皮付き芍薬は「白芍」か「赤芍」かの論点があるが、「白芍」に分類するのが妥当と考える。
日本産芍薬
大和地方(奈良県、和歌山県)、長野県、北海道などで栽培されている。大和地方の気候風土が芍薬の栽培、加工に適しており、市場では「大和芍薬」と呼ばれ、品質的に高く評価されている。それ以外の芍薬は「和芍薬」と称され「大和芍薬」と区別される。北海道は芍薬の加工に向かない気候風土であるため、当社では皮去り、乾燥などの加工調製などを長野県、奈良県で行っている。 芍薬は株分けによって栽培される。栽培に使用しない不要な株(根茎)は日局に適合しないが、浴用剤などの医薬品以外に利用される。
備考:大和芍薬と和芍薬は刻みの剤形では、ほとんど区別できない。 調剤用生薬は生薬自動分包機の普及に伴い、○切りが少なくなり、刻みの剤形が主流になっているが、加工前の品質が分かることから、○切りは昔から漢方家に好まれている。
輸入芍薬
輸入芍薬は日本市場の商品規格にあわせて、生干し加工されたものが主流であるが、中国国内で使用される芍薬は湯通しされた「真芍」であり、日本にも輸入され、わずかに中医学派で使用されている。また、過去には北朝鮮産の皮付き芍薬も多く流通したが、現在、日本政府の外交政策により輸入は止まっている。輸入芍薬の生干し加工調製方法は日本の要望により行われたもので、「日式芍薬」と呼んでおり、中国の本来の加工調製方法とは異なる。
生産加工状況
日本産芍薬(大和芍薬)
芍薬栽培には実生と株分けの2つの方法があり、和芍系統の品種が用いられている。ほとんどが株分けで栽培され、5年生の収穫量は生根で約5,000kg/反ある。収穫は通常10月以降の茎葉が黄変あるいは枯死する頃に、茎葉を刈取り、掘り上げる。
備考:観賞用に栽培する洋芍薬の廃根も薬用に加工されることはあるが、切花を採取するため根が弱り、生薬として良品はできない。日本では薬用の芍薬栽培の場合は一般的には花の蕾は刈取り、根を太らせる。
中国産芍薬 (日式加工)
中国産芍薬は栽培年数が若干短く、一般的に4年で掘り上げる。加工方法は基本的に日本と同じように皮去りをして水洗後、陰干し乾燥する(この加工方法を日本式加工、日式加工と称する)。ただし、皮付き生干し芍薬は水洗後、日干し乾燥をする。中国産芍薬は、日本産に比べ栽培年数が少ないためか、形態は若干細く、香りが薄い傾向がある。
赤芍(内蒙古)
内蒙古の赤芍(P. lactiflora)は草原の雪たまりのようなわずかな丘間や、山間の平地などに群生している。転々と一重の白い花が咲くが、広い平らな草原や、丘の上部には見られない。
理化学的品質評価
産地 | 検体数 | 灰分 6.5%以下 |
酸不溶性灰分 0.5%以下 |
乾燥減量 14.0%以下 |
希エタノール エキス含量 |
---|---|---|---|---|---|
日本ALL | 444 | 3.5 ±0.7 | 0.15 ±0.08 | 11.9 ±2.6 | 39.1 ±5.2 |
奈良(大和) | 119 | 3.3 ±0.5 | 0.14 ±0.08 | 11.9 ±2.9 | 38.9 ±5.0 |
北海道 | 129 | 3.5 ±0.8 | 0.14 ±0.08 | 12.2 ±2.6 | 37.2 ±4.5 |
群馬 | 68 | 3.7 ±0.7 | 0.18 ±0.10 | 11.5 ±2.4 | 42.6 ±4.1 |
中国ALL | 335 | 3.6 ±0.7 | 0.18 ±0.11 | 11.8 ±2.1 | 40.1 ±6.5 |
四川 | 185 | 3.5 ±0.6 | 0.16 ±0.09 | 12.3 ±2.1 | 40.9 ±4.4 |
安徽 | 70 | 4.0 ±0.8 | 0.24 ±0.13 | 10.5 ±2.3 | 40.4 ±9.1 |
浙江 | 29 | 3.4 ±0.9 | 0.19 ±0.11 | 12.5 ±1.2 | 38.7 ±7.6 |
北朝鮮 | 14 | 3.5 ±0.3 | 0.32 ±0.11 | 10.3 ±1.4 | 37.6 ±4.3 |
日本産の主な産地による比較
- 灰分
- 群馬 > 北海道,奈良 ( p < 0.05 ).
- 北海道 > 奈良 ( p < 0.1 ).
- 希エタノールエキス含量
- 群馬 > 奈良 > 北海道 (p < 0.05 ).
中国産の主な産地による比較
- 灰分
- 安徽 > 四川,浙江 ( p < 0.05 )
- 希エタノールエキス含量
- 四川 > 浙江 ( p < 0.05 ).
- 安徽は四川,浙江と有意差無し.
規格等 | 検体数 | 灰分 6.5%以下 |
酸不溶性灰分 0.5%以下 |
乾燥減量 14.0%以下 |
希エタノール エキス含量 |
---|---|---|---|---|---|
皮去 芍薬 | 219 | 3.5 ±0.6 | 0.14 ±0.08 | 12.0 ±2.2 | 39.6 ±4.9 |
皮付 芍薬 | 101 | 3.8 ±0.8 | 0.27 ±0.11 | 11.5 ±1.9 | 42.9 ±6.8 |
真 芍 | 30 | 3.0 ±0.4 | 0.12 ±0.05 | 11.3 ±1.0 | 18.9 ±2.4 |
赤 芍 | 68 | 7.7 ±1.3 | 0.49 ±0.21 | 9.5 ±1.3 | ― |
- 灰分
- 赤芍 > 皮付芍薬 > 皮去芍薬 > 真芍 ( p < 0.05 ).
- 希エタノールエキス含量
- 皮付芍薬 > 皮去芍薬 > 真芍 ( p < 0.05 ).
Paeoniflorin含量の比較
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内部形態:鏡検
大和芍薬:日本・奈良 | 和芍:日本 | |||||
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1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 |
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白芍(生干芍薬) | 北朝鮮芍薬 | 真芍(湯通し) | 赤芍:中国 | |||
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1 | 2 | 1 | 2 | 3 | ||
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