Index:Ainu/Plant

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アイヌ民族の有用植物

原典: 独立行政法人 医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター北海道研究部


学名
(our page)
和名 科名 アイヌ語名 薬用 食用 工芸用 出典
Veratrum maackii Regel var. parviflorum Hara et Mizushima アオヤギソウ ユリ科 Liliaceae ヌペ nupe,茎の基部、(沙流、新冠) 茎の基部:白い部分をゆでてあるいは蒸して食べた。 乾 芳宏「新冠町郷土資料館調査報告書3」�アイヌ民族博物館ホームページ
Picea glehnii Masters アカエゾマツ マツ科 Pinaceae チカプスンク chicap (鳥)-sunku (エゾマツの茎)、茎、(穂別、名寄、美幌) エゾマツの樹脂:傷口に塗った。 エゾマツの葉:鍋に入れ煮汁を衣類に注ぎ臭いをかいで感冒を治した。 エゾマツの樹皮:屋根・壁を葺く材料�エゾマツの枝根:曲げ物を綴じる。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Thalictrum minus L. var. hypoleucum Mig. アキカラマツ キンポウゲ科 Ranunculaceae アリッコ arikko,根、(幌別、沙流) 根:腹痛の時、根を湯に入れて飲んだ。下剤としても用いた。 葉:打ち身などに用いた。種実:気の短い人、酒癖の人、疳の強い子に、御飯にまぜて食べさせた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Cirsium spp. アザミ類 キク科 Compositae アンチャミ anchami,茎葉、(幌別、様似)�アユシキナ ay(とげ)us(多く付いている)-kina(草)、茎葉、(樺太) 全草:脚気の時、煎じて飲んだ(樺太) 葉:若葉をゆがいて汁の実にした。葉の幅が広いものが美味しいという。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 岡田路明「白老のアイヌ文化に伝承される植物とその利用法」 葉が大きくてやわらかいチシマアザミが最も好まれた。
Angelica edulis Miyabe ex Yabe アマニュウ セリ科 Umbelliferae チスイェ chisuye,葉柄、(長万部、有珠、室蘭、幌別、白老、様似、名寄)�チフイェ chihuye,葉柄、(鵡川、沙流、穂別、千歳) 葉柄:大切な食料の一つで、皮をむいて子供は生のまま、大人は油を付けて食べた。茎を煮てから皮をむいて食べたり、冬に備えて乾燥した保存した。夏に魚油が腐りかけた時、刻んで入れ煮直した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Setaria italica P. Beauv. アワ イネ科 Gramineae ムンチロ munchiro,種子、(幌別、沙流) 種子:杵で搗いて粉にし、練り上げて丸く平べったい餅にしてゆでて食べた。豆を煮てそれにこの粉を入れて混ぜ合せ、イワシの油を入れた粥風の食べ物にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 アイヌ民族博物館「アイヌと植物<食用篇>」
Cynanchum caudatum Maxim. イケマ ガガイモ科 Asclepiadaceae イケマ ikema (iそれ-kemaの足)、根、(北海道、樺太) 根:腹痛や下痢に生で飲用、煎じ液で洗って化膿止め、頭痛に焼いて布に包んで鉢巻き、眼病には目につけ、歯痛には噛んだ。種々の呪法や病魔払いに利用。果実内の綿:傷薬。 根:焼灰に入れて焼いて食べたり、煮て食べた(猛毒があるので食べ過ぎないよう注意した)。 偉大な霊能が有ると信じられ、どの家でも乾燥根を持っていた。果実:子供が舟にして浮かべて遊んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Ledum palustre L. subsp. diversipilosum var. nipponicum Nakai イソツツジ ツツジ科 Ericaceae ハシポ haspo (has潅木-po子)、茎葉、 (屈斜路、十勝、上川) 葉:*煎じて条虫駆虫薬や緩下薬として用いた。 葉:茶として飲んだり、粥に入れた。 葉:煙草の代用。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Taxus cuspidata Sieb. et Zucc. イチイ イチイ科 Taxaceae ララマニ rarmani,木、(北海道全地) 果実:脚気、利尿剤として生食した。  内皮:乾燥させて、下痢止めに煎じて飲んだ。 果実:生食(肺や心臓の弱い人に特に食べさせた)。 樹皮・心材:染色(赤色)。木:柱にしたり、弓や小刀の柄を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Geranium sibiricum L. var. glabrius Ohwi イチゲフウロ フウロソウ科 Geraniaceae アウシカラキナ ausikarakina (an 我々-usi 関節-kara 治療する-kina草) * 葉:神経痛に煎じて飲むと効があるといわれる。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *、茎葉、 (白浦)
Salix integra Thunb. イヌコリヤナギ ヤナギ科 Salicaceae ウラスス ura-susu(<uray 簗-susu 柳)、茎、(沙流、鵡川、千歳、石狩) 樹皮:小刀で刻み、熱湯に浸してやわらかくした後、傷口に当てた (傷薬)。内皮を石で砕いてそれをまるめ、虫歯の穴に埋めると痛みがおさまる (沙流)。 内皮から縄を作った。 *川を下る魚を採る時、簗を作るが、杭に本種の茎や枝を絡めて柴垣にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *更科源蔵「コタン生物記 I」
Seseli libanotis Koch var. japonica H. Boiss. イブキボウフウ セリ科 Umbelliferae ウペウ upew,根、(北海道各地) 根:風邪、腹痛、二日酔いの特効薬と考え、煎じて風邪の際に飲んだ。強烈な臭気が病魔を撃退すると考え、流行病の際には予防薬のように用い、疫神が嫌うとして魔除けにもした。 根:お茶や水代わりに飲用し、粥の中に入れて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Betula maximowicziana Regel ウダイカンバ カバノキ科 Betulaceae シタッニ sitat-ni (si本当の-tat樺皮-ni木)、茎* 樹皮:手桶などの容器材料、燈心、屋根・壁を葺く材料にした。**鎧を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(美幌、屈斜路、足寄、名寄、穂別、長万部) **更科源蔵「コタン生物記」
Aralia cordata Thunb. ウド  ウコギ科 Araliaceae チマキナ chima(かさぶた)-kina (草)、茎葉、 (北海道全域) 茎:煎液で傷口を洗い化膿を防止、腫物を洗うとかさぶたがつかないという。根:神経痛、関節炎、打身に、煎液で患部を洗った。*痔疾患には座薬として利用した。 若茎:生食、またはニシンと一緒に煮て皮を剥いて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Polygonum weyrochii Fr. Schm. ウラジロタデ タデ科 Polygonaceae アマムクッタラ amam-kuttar,茎、 クッタラアマム kuttar-amam,果実、(幌別) 痩果:搗いて皮を取り、飯に炊いて油を付けて食べ た。 若い茎:生あるいは料理して食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Acer mono Maxim. var. glabrum Hara エゾイタヤ カエデ科 Aceraceae ニタットペニ nitat (湿地)-topeni (乳の木) 、茎、 (美幌、穂別) イタヤカエデの樹液:生飲。煮つめて飴にしたり、キハダ、サンザシの果汁を加えて酒を作った。 イタヤカエデの材:各種の器具。イタヤカエデの樹皮:乳がでるように祈祷し、煎じて飲んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Rubus idaeus L. var. aculeatissimus C. A. Meyer エゾイチゴ バラ科 Rosaceae フレプ hurep (hure 赤い-p もの)、果実、(美幌、荻伏):* 茎葉:カラフトニンジンとイソツツジの茎葉と混ぜて煎じて風邪の時に服用した。 茎葉:煎じてお茶にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *キモウレプ kimourep (kim 山-o にある-hurep いちご)、果実、(美幌、屈斜路) 。 この他、地域により多くの呼び名がある。
Ligustrum tschonoskii Decne. f. glabrescens Murata エゾイボタ モクセイ科 Oleaceae エポタンニ epotanni (eそれに-potar病魔を追い出すことを頼む-ni木) * 葉:突き眼のとき葉をもんで絞り汁に人乳を混ぜ眼の中に入れた。 木:箸を作って常用(虫歯予防)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *、茎、(千歳)
Urtica platyphylla Wedd. エゾイラクサ  イラクサ科 Urticaceae モセ mose,枯茎、(北海道、樺太)  茎葉:じんま疹、虫に刺されて痒い時に、生のままもんで汁を患部に途布。冬は乾燥したものを水に浸して使用した。 若い茎:茹でて汁に入れて食べた。 枯茎:繊維をとり織物にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Acanthopanax senticosus Harms エゾウコギ ウコギ科 Araliaceae ニタッソコニ nitat (湿地)-sokoni (エゾニワトコ) 、茎、 (美幌) 木:悪疫流行の際に杖を作って持ち歩いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Corydalis ambigua Cham. et Schltdl. エゾエンゴサク ケシ科 Papaveraceae "トマ toma 塊茎、 (北海道、樺太) " 塊茎:2~3日水でさらし、餅にした。煮たり、焼いたりして食べた。紐に通して数珠状にして乾燥させ、冬期に食べた。
Senecio pseudo-arnica Less. エゾオグルマ キク科 Compositae プラキナpura-kina,茎葉、(真岡); ポリヤキナporiya-kina,茎葉、 (白浦) 葉:もんで傷につけた。茎の外皮をかきとり、かきくずを傷につけたり、腫れ物の罨法に用いた。茎葉を煎じ、その煎液で淋病、神経痛、関節炎等の患部を洗った (樺太)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Lilium maculatum Thunb. subsp. dauricum Hara エゾスカシユリ  ユリ科 Liliaceae イマキパラ imaki (それの歯)-para (幅広い) 、鱗茎* 鱗茎:芯は苦いので除き、鱗片をほぐして洗って米と一緒に焚いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(美幌、屈斜路、浦河)
Hemerocallis dumortieri Morr. var. esculenta Kitamura エゾゼンテイカ ユリ科 Liliaceae  クイトプキナ kuytop (雁)-kina (草)、葉、 (上川) 花:さっと茹でて、ヤマブドウの若芽を潰した汁をかけて食べたり、三杯酢にして食べた。種子も食用とした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Isatis yezoensis Ohwi エゾタイセイ アブラナ科 Cruciferae セタアタネ seta-atane, (seta 犬-atane センダイカブ)、根 葉:染料(藍色) 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Aconitum yesoense Nakai エゾトリカブト、オクトリカブト  A. japonicum Thunb. " キンポウゲ科 Ranunculaceae スルク surku,根、 (北海道) 根:狩猟の矢毒。
Angelica ursina Maxim. エゾニウ セリ科 Umbelliferae シウキナ siw (苦い)-kina (草) 、葉柄、 (北海道、樺太) 葉柄:皮をむき、苦くないものを生食。若い芽は水に浸しておき、汁の具にした。 枯茎:*中空の茎を入れ物とした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *福岡イト子「アイヌ植物誌」
Sambucus racemosa L. subsp. kamtschatica Hulten エゾニワトコ スイカズラ科 Caprifoliaceae ソコンニ sokon-ni (si糞-kor持つ-ni木) 、茎* 木:掻き屑(綿状の屑)を水に浸して石を焼き、打身・疝気等の患部を罨法した。産前・産後に飲用。果実:疥癬の患部に擦り込む。 果実:生食。 木:除魔力があるとされ、呪術用に用いた。木幣、死体を包むゴザを綴合わす串に使用。**骨折の時、副木にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(美幌、屈斜路、足寄、塘路、名寄、長万部) ** 木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Prunus padus L. エゾノウワミズザクラ バラ科 Rosaceae キキンニ kikinni (kiki身代わりに出て危険を追っぱらうもの-<neになる-ni木) * 樹皮:煎じ液を風邪、腹痛に服用。掻き屑(綿状の屑)を水に   浸してただれ目を洗った。 樹皮:粥に入れたり、日常的に茶として飲んだ。 除魔力があり、身代わりに危険を追い払うという。鮭を殺す打頭棒。**イナウ(木幣)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *茎、(北海道、樺太) **福岡イト子「アイヌ植物誌」 <neは、発音が変化してnになった意。
Salix hultenii Floderus var. angustifolia Kimura エゾノバッコヤナギ ヤナギ科 Salicaceae チプニスス chipni-susu(chip-ni 舟・木-susu 柳)、茎、(名寄) 内皮:3cm位の幅に裂いて、鮭鱒を結束する紐に使った。縄を編んだり、夏用の靴を作った。木で舟を作ったらしい*。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *丸木舟を作った材料については、本種ではなく、オオバヤナギ Toisusu urbaniana kimuraとの説がある。
Caltha palustris L. var. barthei Hance エゾノリュウキンカ キンポウゲ科 Ranunculaceae  プイ puy,根、 (北海道全地) 根:火傷・創傷に煎じてその汁で患部を洗った。産後にハマナスの実と一緒に煎じて服用した。 根:秋に採取して、煮て食べたり、乾燥させ、冬に煮て筋子を入れ、油を加えて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Lathyrus palustris L. subsp. pilosus Hult. エゾノレンリソウ マメ科 Leguminosae パスクラル paskuraru (カラスの・弁当)、果実、(美幌、屈斜路) 茎葉:煎じて肝臓病・子宮病等に服用。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Botrychium multifidum var. robustum C. Chr. エゾフユノハナワラビ ハナヤスリ科 Ophioglossaceae  ウシシキナ usiskina (usis蹄-kina草) 、裸葉、 (千歳) 葉:食用。産前・産後の疲労回復に草の汁を飲ませる。肺病にも煎じて飲ませた。 葉:刻んで乾魚の煮たものにふりかけた。刻んでクロユリの鱗茎と一緒に炊いて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Lythrum salicaria L. エゾミソハギ ミソハギ科 Lythraceae エント ento,茎葉、 (北海道各地) 茎葉:打身の薬(茎葉を石で暖めて患部を包み、布で巻いた)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Daphniphyllum macropodum Miq. var. humile Rosenthal エゾユズリハ ユズリハ科 Daphniphyllaceae リヤハム riyaham (riya 越冬する-ham 葉)、葉、(名寄、十勝、石狩) 葉:煙草にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Trillium smallii Maxim. エンレイソウ ユリ科 Liliaceae キナエマウリ kina(草)-emawri(イチゴ)、果実、(長万部、幌別、白老、穂別) *エンレイソウ根:回虫駆除のため、煎じて飲んだ。 果実:甘くて熟してから生食した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 更科源蔵「コタン生物記」 *木下良裕「アイヌの疫病とその治療法に関する研究」
Polygonatum odoratum var. maximowiczii Koidz. オオアマドコロ ユリ科 Liliaceae エトロラッキプ etororatkip (etor鈴-oそこに-ratkiぶら下がっている-pもの) * 根:痔の傷口が痛む時用いた。�果実:胃腸薬。 根:焼灰の中に入れたり、生乾きにして煮た。やせた子供に食べさせた。 やせた飼熊に食べさせた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *、茎葉、(幌別、足寄)
Polygonum sachalinense Fr. Schm. オオイタドリ タデ科 Polygonaceae クッタラ kuttar,茎、(幌別) *葉:出来物に貼って膿を出した。歯槽膿漏ででた傷を治した。 茎:若い茎の葉の皮をむいて生で食べた。 葉:落とし紙に使った。枯れた茎で冬囲いの垣を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *アイヌ民族博物館「アイヌと植物<薬用編>」 北海道内には倶多楽湖、窟太郎山、屈足などアイヌ語に基づく地名が多い。
Cardiocrinum cordatum Makino var. glehnii Hara オオウバユリ ユリ科 Liliaceae トゥレプ turep (<ruとける-reさせる-pもの)、鱗茎、(北海道全地) 鱗茎:6月末から7月に収穫し、焼灰に入れて焼いたり、刻んで粥に入れて食べた。刻んで生乾きにして臼でひき、円盤状に固めて乾燥させ、冬に粥に入れて食べた。 澱粉をとり、団子にして食べたり、冬に粥に入れて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」:調理法について、詳細な説明が記載されている。 <ruは、発音が変化してtuになった意。
Plantago asiatica L. オオバコ オオバコ科 Plantaginaceae エルムキナ erumkina (erum鼠-kina草) 、葉* 生葉:おできの頭に貼って膿の芯を吸い出した。 全草:痔・脱肛・白癬の患部を、煎じた湯で洗う。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、虻田、有珠、室蘭、幌別、白老、穂別、名寄)
Vaccinium smallii A. Gray オオバスノキ ツツジ科 Ericaceae アイェカリプ ayekarip,果実、 (穂別) 果実:生食。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Angelica genuflexa Nuttall オオバセンキュウ セリ科 Umbelliferae  ムヌシ munusi (mun草-ousi根)、根 、(名寄) 根:腹痛の時、噛んで飲みくだした。*掘って乾燥させ、気分の悪い時に削って、煎じて飲んだ。 根:煎じてお茶として飲んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」:エゾオオバセンキュウとしている。 *更科源蔵「コタン生物記」
Heracleum dulce Fisch. オオハナウド セリ科 Umbelliferae ピットク pittok,根出葉の葉柄、(全北海道) 根:煎じ液を腹痛の薬。がっちゃき(痔疾)のとき坐浴や、坐薬に用いた。葉柄:*生食して条虫駆虫薬。 若い茎:皮をむいて生食。葉柄:皮をむいて乾燥させたものを水でもどして煮る。根:刻んで粥にいれたり、乾燥物を茶にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」:本書には、ハナウドとして記載してある。 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Trillium kamtschaticum Pall. オオバナノエンレイソウ ユリ科 Liliaceae キナエマウリ kina(草)-emawri(イチゴ)、果実、(長万部、幌別、白老、穂別) *エンレイソウ根:回虫駆除のため、煎じて飲んだ。 果実:甘くて熟してから生食した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 更科源蔵「コタン生物記」 *木下良裕「アイヌの疫病とその治療法に関する研究」
Artemisia montana Pamp. オオヨモギ キク科 Compositae ノヤ noya (もみ草)、葉、(北海道、樺太) 茎葉:風邪の療法薬(鍋に入れて焚き、湯気をあびて汗をだす)。 葉:傷口の止血、痛み止め(歯痛)、わきがの臭とり。煎じて、虫くだしや咳止め薬。 枯葉:もぐさ。 葉:茹でて草餅や草団子にした。若葉をきざんで、粥にいれた。 茎:すだれ(小魚や食料の乾燥)や人形(手に負えない悪神や魔物退治)材料。枯葉:たきつけ。茎葉:蚊よけに焚く。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Salsola komarovii Lljin オカヒジキ アカザ科 Cenopodiaceae アイエンキナ ay(刺)enke(鋭)-kina(草)、茎葉 茎葉:葉の尖端にある刺を取ってから煮て食べた。  知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Dryopteris crassirhizoma Nakai オシダ オシダ科 Aspidiaceae  カムイソロマ kamuy-sorma (kamuy神-sormaシダ)、葉、(美幌、屈斜路) 葉:陰干して腹痛に煎じて飲んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Juglans mandshurica Maxim. var. sachalinensis Kitamura オニグルミ クルミ科 Juglandaceae ニヌム ninum (ni木-num実)、果実、(北海道全域) 実:秋に採取して貯蔵し、冬に焚き火であぶり、胚を食べた。 樹液:飲用。 樹皮:黒の染料。魚を取る時に砕いた樹皮を川に流すという話がある。木:木幣の材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Filipendula kamtschatica Maxim. オニシモツケ バラ科 Rosaceae イシメクッタル isime-kuttar (筒茎)、茎葉、(名寄、上川) 茎葉:じんま疹・湿疹等に煎じてそれで洗った。飼熊の病気(下痢)にも煎じて飲ませた。根:*止痢剤として煎じて飲んだり、煎液で粥を作り食べさせた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Ulmus laciniata Mayr オヒョウ ニレ科 Ulmaceae アッニ at-ni (オヒョウの内皮を取る木)、茎、(全北海道) 内皮:紐、織物。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Metaplexis japonica Makino ガガイモ ガガイモ科 Asclepiadaceae チトゥイレプ chituyrep (chituyreちぎれる-pもの)、根* **種子の毛:血止め。 果実(莢):生食。 根:煮て食べた。いずれも食べ過ぎると痙攣する。**ヤブマメと一緒にゆで、筋子を加えて潰し、ニシン油をたらして食べた。 **果実:イケマと同じように、子供が舟にして浮かべて遊んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、幌別) **更科源蔵「コタン生物記」
Erythronium japonicum Decne. カタクリ ユリ科 Liliaceae エシケリムリム eskerimrim,地下茎、(幌別) 鱗茎:砕いて水にさらして澱粉を採り、粥にいれる。 葉:*茹でて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *福岡イト子「アイヌ植物誌」
Typha latifolia L. ガマ ガマ科 Typhaceae  シキナ si (真の)-kina (草)、 茎葉、(北海道全域) 花穂:黒焼きにして油と練り合わせおできの薬にした。 茎葉:乾燥させてゴザ、*敷物や寝具、天幕、舟の帆等の材料。 花穂:綿として使用。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *更科源蔵「コタン生物記」
Humulus lupulus L. var. cordifolius Maxim. カラハナソウ クワ科 Moraceae コサ kosa,根、(長万部、幌別)� 根:焼いたり煮たりして食べた。�果実:アワ飯にかけて発酵させて麹に用いた。 茎:乾かして揉み表皮を落として、糸をとった。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Conioselinum kamtschaticum Rupr. カラフトニンジン セリ科 Umbelliferae ウペウ upew,根、(白老) 根:独特の臭気があるため、乾燥した根を玄関や軒先にし、魔除けに使用した。 姉帯正樹他「アイヌ民族博物館研究報告第7号」
Conioselinum kamtschaticum Ruprecht カラフトニンジン セリ科 Umbelliferae フラウェンチポコ hurawen (臭の悪い)-chipoko (マルバトウキの茎葉)* 葉:イソツツジの葉と混ぜて煎じ風邪・産前産後に服  用。打身の時煎汁で患部を洗う。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *茎葉、(白浦)
Empetrum nigrum L. var. japonicum K. Koch ガンコウラン ガンコウラン科 Empetraceae ホトキマイマイ hotokimaymay,果実、(幌別) 果実:食べると病気にかからないと言って、大量に採取して生で食べた。 果実:染料(紫、黒)に用いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Helianthus tuberosus L. キクイモ キク科 Compositae ムンキリ mun (草)-kiri (の脚)、塊茎、(幌別) 塊茎 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Magnolia praecocissima Koidz. var. borealis Koidz. キタコブシ モクレン科 Magnoliaceae オマウクシニ omawkusni (o尻、そこ-maw風、香気-kus通る-ni木)、茎* 皮・枝:風邪の時、煎じて飲んだ。 内皮:怪我をした時に、掻き屑(綿状の屑)で温湿布した。 皮・枝:日常的に茶として飲んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(北海道各地)
Impatiens noli-tangere L. キツリフネ ツリフネソウ科 Balsaminaceae カッコクキナ kakkok (カッコウ鳥)-kina (草)、茎葉、 (名寄) 葉:膝の関節がふくらんで筋肉が伸びない病気に、もんでつけた。 茎葉:子供が1年以上たっても歩かない時、体をさすったり、衣服の間に入れた。花:子供の遊びに使われた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」:名前やその意味について、詳細な説明が記載されている。
Phellodendron amurense Ruprecht キハダ ミカン科 Rutaceae シケルペニ sikerpe-ni (キハダの実のなる木)、茎、(北海道全地) 果実:喘息薬、胃病、回虫駆除、しもやけ。 内皮:打身や腫物へ温湿布、喉の病気に乾燥粉末塗布。 *眼疾患には、直接貼布(眼帯のように)した。 果実:ジャム、各種の煮物、甘い果実のものは生食。 材:イナウ(木幣)、最も尊いとされる。*骨折時の副木。樹皮:屋根、舟、染色材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Galium verum L. var. asiaticum Nakai キバナカワラマツバ アカネ科 Rubiaceae マンチウキナ manchiw (満州)-kina (草)、茎葉、(真岡、白浦) 茎葉:神経痛、関節炎等骨の病気に、茎葉を風呂に入れて湯治した。煮つめて飴状にして打身に塗布。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Gagea lutea Ker-Gawl. キバナノアマナ ユリ科 Liliaceae チカプトマ chikap (鳥)-toma (エゾエンゴサクの塊茎)、根茎* 鱗茎:熱灰の中に入れたり、煮て油をつけて食べた。 葉:汁の具にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(幌別)
Panicum miliaceum L. キビ(イナキビ) イネ科 Gramineae シプシケプ sipuske(ふくれる)p(もの)、種子、(幌別、沙流) メンクル menkur,種子、(静内) 種子:杵で搗いて粉にし餅にして食べた。豆と一緒に煮て、ご飯に炊いた。ヒエを炊く時、少量加えておくと粘り気が出て、おにぎりにすることができた。 アイヌ民族博物館「アイヌと植物<食用篇>」
Allium victorialis L. subsp. platyphyllum Hulten ギョウジャニンニク ユリ科 Liliaceae "プクサ pukusa,茎葉*;キト kito 茎葉、(北海道北東部、全樺太)" 茎葉:肺病・肋膜炎・風邪・脚気・腎臓・食傷・下痢等に煎じて飲んだ。火傷・凍傷・痔・子宮病・消渇・打身・田虫等には煎汁で患部を洗滌、又は罨法。 **条虫駆虫。 茎葉:若い茎葉は、汁の具にした。細かく刻んで乾燥し、冬にご飯にたきこんで油をつけて食べたり、汁の具にした。茎:茹でて油であえた。 茎葉:病魔除けに戸口、窓口に置いたり、枕につめた。
Agrimonia japonica Koidz. キンミズヒキ バラ科 Rosaceae キナライタ kina(草)-rayta(いが)、痩果、(美幌、屈斜路) *越冬芽:赤痢や腸チフスなどによる血便を伴う激しい下痢に見舞われた時、根に付く白いユリ根状のもをミチヤナギなどと合わせて煎じて飲んだ。擦って生のまま飲むと速効性があるという。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *姉帯正樹他「アイヌ民族博物館研究報告第8号」 越冬芽は秋から冬にかけては薄緑色の幼芽となる。
Matteuccia struthiopteris Todaro クサソテツ オシダ科 Aspidiaceae  ソロマ sorma,裸葉、(名寄、美幌、屈斜路) 葉:焼いて粉末にし、火傷で糜爛した部分に塗布した。 葉:若葉をゆがいて汁の具にした。 胞子:米や粟、百合根と一緒に炊いて、油をつけて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Chelidonium majus L. var. asiaticum Ohwi クサノオウ ケシ科 Papaveraceae オトンプイキナ otompuy (肛門)-kina (草)、茎葉* 茎葉:便秘の時煎じて飲んだ。痔や婦人病に煎じてその汁で患部を洗ったり飲んだ。 **痔には肛門に茎を直接挿入する療法もあった。婦人病には腰湯を使った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、幌別、穂別、様似、芽室) **木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Adiantum pedatum L. クジャクシダ ワラビ科 Pteridaceae  エトゥケムヌムン etukemnu-mun (etu鼻-kemnu出血-mun草)、葉* 葉:鼻血・喀血に煎じて飲んだ。腰痛の時、草を当てて、その上にぼろに包んだ焼いた石を乗せ罨法した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(美幌、屈斜路)
Lilium medeoloides A. Gray クルマユリ ユリ科 Liliaceae ニヨカイ niyokai (<ni 歯-okay 群生する)、鱗茎、* 鱗茎:秋に収穫後、芯を取り除き、鱗片をほぐして洗って米に混ぜて炊く。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、沙流、鵡川、千歳) パララ parara、鱗茎、(美幌、屈斜路)
Lonicera caerulea L. var. emphyllocalyx Nakai クロミノウグイスカズラ スイカズラ科 Caprifoliaceae ハシカプ has(枝條)ka(の上)o(にたくさんなる)p(もの)、果実、(幌別) エヌミタンネ e(頭)numi(の粒)tanne(長い)、果実、(美幌、屈斜路、足寄) 果実:生で食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 北海道ではハシカプのなまった“ハスカップ”の名で知られ、勇払原野、根釧原野が自生地として有名。粒の細長いのと丸いのがあり、細長い方が大きくて甘い。苫小牧地方では、エヌミタンネがなまったと思われる“ユノミ”と称している。
Fritillaria camtchatcensis Ker-Gawl. クロユリ ユリ科 Liliaceae アンラコル anrakor (an黒-ra葉-korもつ)、鱗茎* 鱗茎:茹でて油をつけて食べた。乾燥させて冬の食糧にした。 花:染色(黒色)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(幌別、穂別、名寄、美幌)
Alnus hirsuta Turcz. ケヤマハンノキ カバノキ科 Betulaceae ケネ kene (<kem血の-<ni木)、茎、(北海道全地) 樹皮:煎じて補血強壮剤として服用。 *眼疾患には煎液で洗眼した。 樹液: **染料(赤みを帯びた褐色)。 材: **赤ちゃんのおしゃぶり。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」 **福岡イト子「アイヌ植物誌」 <kem 及び<niは、発音が変化した意
Geranium thunbergii Sieb. et Zucc. ゲンノショウコ フウロソウ科 Geraniaceae ポンライタ ponrayta (pon小さい-raytaいが)、茎葉及びさっ果、 (幌別) 茎葉:煎じて腹痛(特に下痢)の時服用。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Arisaema serratum Schott コウライテンナンショウ サトイモ科 Araceae ラウラウ rawraw,球茎、(北海道全地) 球茎:子宮病、神経痛にすりおろして足の裏に貼った。駆虫剤として丸呑みした。頭痛に刻んで布に包んで鉢巻きにした。 *虫歯による浮腫に塗布。種子:腹痛の時飲んだ。 球茎:熱灰に入れて焼いて食べた(球茎の中央の黄色い部分は有毒なので取って捨てた)。 中毒した時はヤマブドウの汁を飲めばよいと云う(伝承に基く)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Nuphar japonicum DC. コオホネ スイレン科 Nymphaeaceae  カパト kapato,根茎、(幌別) 根茎:刻んで粟や米に混ぜて炊いて食べた。乾燥させて冬の食糧とした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Oreorchis patens Lindl. コケイラン ラン科 Orchidaceae ニマッコトゥク nimak(歯)ko(に)tuk(付く)、塊茎、(白老) 塊茎:しもやけやあかぎれに用いた。 塊茎:掘り出し、水洗いして生のまま食べた。子供がおやつ代わりにした。ゆでて油などを付けて食べた。噛むと粘って歯にこびり付く。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 アイヌ民族博物館「アイヌと植物<薬用編>」 岡田路明「白老のアイヌ文化に伝承される植物とその利用法」
Phyllitis scolopendrium Newm. コタニワタリ チャセンシダ科 Aspleniaceae エフルペシキナ ehur-pesh-kina (小山に沿うて下方へ生えている草)* 膀胱炎に煎じて飲むと言われている。** 葉:タバコの代用、又はタバコに混ぜて呑んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(鵡川、千歳、沙流) **出典不詳
Arctium lappa L. ゴボウ キク科 Compositae セタコロコニ seta(犬)-korkoni(フキ)、葉柄、(幌別) 葉:揉んで傷口に付けたり、腫物の膿を吸い出すのにも用いた。 葉:餅に搗き混ぜて食べた。 根:汁の実にした。 果実:ネズミ野獣が近付けぬように、倉の下に大量に撒き散した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Euonymus alatus Sieb. f. striatus Makino コマユミ ニシキギ科 Celastraceae イマクカニ imakkani (imak 歯-kar治す-ni木)、茎* 木:虫歯が痛む時、この木で箸を作って食べると治り、日常的に使用すると歯を丈夫にすると言われる。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(美幌、屈斜路、足寄)
Cremastra appendiculata Makino サイハイラン ラン科 Orchidaceae ニマッコトゥク nimak(歯)ko(に)tuk(付く)、塊茎、(白老) 塊茎:しもやけやあかぎれに用いた。 塊茎:掘り出し、水洗いして生のまま食べた。子供が おやつわりにした。ゆでて油などを付けて食べた。噛む粘って歯にこびり付く。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 アイヌ民族博物館「アイヌと植物<薬用編>」 岡田路明「白老のアイヌ文化に伝承される植物とその利用法」
Cremastra appendiculata Makino サイハイラン ラン科 Orchidaceae ニマクコトゥク nimakkotuk (nimak歯-koに-tukつく) 、塊茎* 塊茎:乾燥したものを噛んで腹痛の時にへその所に塗った。生または焼いて潰して乾燥させ、粉末を湯で練って、しもやけ、ひび、あかぎれ、傷に塗布した。 **歯痛に用いた。 塊茎:煮たり焼いたり生でも食べた。煮て魚油または筋子を潰したものをつけて食べた。 塊茎:粘着剤にしたり、煮て丸めて子供達の手鞠にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、虻田、幌別、白老、鵡川、穂別、平取、名寄) **木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Actinidia arguta Planch. ex Miq. サルナシ(コクワ) マタタビ科 Actinidiaceae クッチプンカル kutchi-punkar (サルナシの実の生ずる蔓)、茎* 樹液:春先に蔓に傷をつけて樹液をとり、神経痛の薬として飲用 **果実:乾燥させたものを煎じて、利尿剤として腎臓病に用いた。 果実:生食。容器につめて発酵させ、酒の様にして飲んだ。 蔓:かんじきを作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(北海道各地) **福岡イト子「アイヌ植物誌」
Zanthoxylum piperitum DC. サンショウ ミカン科 Rutaceae サイソ sayso,茎、(幌別、穂別)�カンチカマニ kanchikamani,茎、(沙流、千歳、有珠) 内皮:煎じて、痔の薬として飲んだ。 *噛んで歯痛を治した。 葉、果実:香料に用いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疫病とその治療法に関する研究」 アイヌ語のサイソは日本語のサンショウに由来する。
Tilia japonica Simonkai シナノキ シナノキ科 Tiliaceae ニペシニ nipes-ni (シナノキの内皮の取れる木)、茎* 内皮: **細い繊維を縫合の糸に利用。 内皮:縄、織物、染色(灰汁で煮ると淡紅色を呈す)。 材:舟底。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、虻田、有珠、室蘭、幌別、穂別、千歳、沙流、名寄) **木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Anthriscus sylvestris Hoffm. シャク セリ科 Umbelliferae イチャリキナ i(あれ)chari(散らす)-kina(草)、茎葉、(北海道各地) 茎:花が咲く前に茎を取って皮をむいて生で食べた。焼いてから油を付けて食べた。茎を漬物にした。 葉:若い葉を陰干しにして保存し、生理時やその他に散し紙として用いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Veratrum maackii Regel var. japonicum T. Shimizu シュロソウ ユリ科 Liliaceae ヌペ nupe,茎の基部、(沙流、新冠)   茎の基部:白い部分をゆでてあるいは蒸して食べた。 乾 芳宏「新冠町郷土資料館調査報告書3」�アイヌ民族博物館ホームページ
Acorus calamus L. ショウブ サトイモ科 Araceae  スルククスリ surku (トリカブトの根)-kusuri (薬)、根茎* 根:腹痛に煎じて飲んだ。全草:煎じて打身の患部を洗った。 **トリカブトの毒にやられた時、煎汁を解毒剤とした。 植えておくと蛇がこないとして家の傍に植えた。 "知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(幌別
Betula platyphylla Sukatchev var. japonica Hara シラカバ カバノキ科 Betulaceae キタッニ kitat-ni (光る樺皮のとれる木)、茎、(美幌、屈斜路、名寄) 樹液:飲用、又はザゼンソウの葉を刻んで入れ、2~3日放置して飲む。放置して豆腐のように凝固したものにキハダまたはクロミサンザシの果汁を加えて酒を作った。 樹皮:各種の容器材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Cnidium officinale Makino センキュウ セリ科 Umbelliferae ウペウ upew,全草、(平取) 根茎:風邪を引いた時などに、煎じて飲んだ。 茎葉:風邪を引いた時などに、お湯に入れて飲んだ。 姉帯正樹他「アイヌ民族博物館研究報告第8号」 明治18年以降に本州から道内各地に持ち込まれたもの。 川きゅう(根茎)は局方収載の医薬品。
Brassica napus L. var. napobrassica Mill. センダイカブ(ルタバガ) アブラナ科 Cruciferae アタネ atane,根、(幌別)  根と葉を食用にした。葉は貯蔵しておき、冬に汁の具にした。 除魔力があると信じられ、疫病が流行する時に好んで食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Thermopsis lupinoides Link センダイハギ マメ科 Leguminosae ライケウキナ raykewkina (ray死-kew骸-kina草)、茎葉、(白浦) 茎葉:悪魔払いに広く用いられた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Geum japonicum Thunb. ダイコンソウ バラ科 Rosaceae ポンライタ pon (小さい)-rayta (いが)*;セタライタ seta 犬)-rayta ** 根:下痢の時煎じて飲んだ。全草:穂のでないときに採取して乾燥させ、神経痛などに、風呂に入れて湯治した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *痩果、(虻田、有珠、幌別) **痩果、(千歳、沙流、十勝) 
Hosta rectifolia Nakai タチギボウシ ユリ科 Liliaceae ウクルキナ ukur*-kina 草、葉、(名寄、幌別、穂別、鵡川) 葉柄:細かく刻んで飯や粥に炊き込んだり、乾燥させて冬のために貯えた。 葉を陰干して細かく刻み、煮た後冷却し、イタヤカエデやシラカバの樹液で作った酒母に混ぜて濁酒を作った (樺太)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *ukurの意味は不明。
Aralia elata Seemann タラノキ ウコギ科 Araliaceae セワッニ sewatni (sewatウドの新芽-ni木)、茎、(名寄、近文) 根:胃痛の時、煎じて飲んだ。 若芽 木:物干し竿に使用(まっすぐで、節がないため)。悪疫流行の時、戸口や窓口に立てておいた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Sasa kurilensis Makino et Shibata チシマザサ イネ科 Poaceae  ウリペ uripe (笹葉の食物)、 種実、 (北海道全地);ウラサム urasam ,葉、 (名寄) 葉:魚に中毒した時、黒焼きにして飲んだ。 葉:ニシンの油の渋味を抜くとき用いた。 種実:粉にして団子にしたり、ご飯と一緒に炊いた。 葉枝:束ねて屋根や側壁を葺く材料。 葉:悪魔払いの手草。子供は笹舟を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Geranium erianthum DC. チシマフウロ フウロソウ科 Geraniaceae マンチウキナ manchiw (満州)-kina (草)、茎葉、(白浦) 茎葉:煤水の様な黒い水を吐く重い病気の時、煎じて飲ませた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Schisandra chinensis Baill. チョウセンゴミシ マツブサ科 Schisandraceae フレハッ hure (赤い)-hat (ブドウ)、果実、(名寄、足寄) 蔓:煎汁で目を洗う。風邪の時煎じて飲む。冬用に、秋に採取して乾燥して保存した。 果実:生食。秋に採取して乾燥して保存し冬に利用。 蔓:シャーマンの太鼓の撥(樺太)や、雪上を歩くかんじきの材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Adenophora triphylla A. DC. var. japonica Hara ツリガネニンジン キキョウ科 Campanulaceae ムケカシ mukekasi (muk蔓になる-ekasi 翁、祖父)、根、(北海道各地)* 根:母乳のでない時に煎じて飲んだり、煎汁を乳房につけて、冷やした。 根:焼いて食べたり、煮て油をつけて食べた。 全草:敷き草に使用。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *モシカルペ moskarpe 、茎葉、(名寄)
Impatiens textori Miq. ツリフネソウ ツリフネソウ科 Balsaminaceae オクイマキナ okuyma (放尿する)-kina (草)、茎葉* 茎葉:煎じて利尿剤。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(幌別、美幌、屈斜路)
Codonopsis lanceolata Trautv. ツルニンジン キキョウ科 Campanulaceae トプムク top-muk,根、(沙流、鵡川、千歳、上川) 根:母乳の出ない時、煎じて飲用したり、煎液で乳房を冷やした。 根:焼いて食べたり、煮て油をつけて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Cicuta virosa L. ドクゼリ セリ科 Umbelliferae  トカオマプ tokaomap (to沼-kaの上-omaにある-pもの)、根茎* 根茎:体に熱のある時、刻んで布に包み、体を拭った。腰が痛む時、焼いて患部に当てた。 根茎:悪疫が流行する時、刻んで袋に入れ、子供のお守りにした。矢毒にも使った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(北海道各地)
Aesculus turbinata Blume トチノキ トチノキ Hippocastanaceae トチニ tochi-ni,茎、(幌別) 果実:水に漬けて、その浸出液で目や傷口を洗う。 材:臼や杵などの材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Abies sachalinensis Masters トドマツ マツ科 Pinaceae フプ hup,茎、(北海道各地) 果実 樹皮:屋根 壁の材料。 枝:悪魔払い。 樹脂:接着剤。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Elsholtzia ciliata Hylander ナギナタコウジュ シソ科 Labiatae エント ento,茎葉、*:セタエント seta-ento,茎葉、** 茎葉:風邪をひいた時、陰干して煎じて飲んだ。 茎葉:火であぶってから炊きたての粥に入れて香気をつけた。陰干してお茶として飲んだ。 茎葉:山狩や漁に行く時、徳利の栓に利用した。 香気が強く、常用すると身体の健康を保つと信じた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(名寄、幌別、様似、本別): **(長万部、沙流,鵡川、千歳、穂別)
Sorbus commixta Hedl. ナナカマド バラ科 Rosaceae イワキキンニ iwa (山地の)-kikinni (エゾノウワミズザクラ)、茎* 木:皮付きのまま薄く削って水に浸し、洗眼した。�木質部:掻き屑(綿状の屑)を、温湿布時に使用。 木:特有の臭気があり、臭気に除魔力があるとされた。木幣、杖、かんじき、槌の柄の材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(美幌、足寄);パセニ pase-ni (大切な木)、茎、(名寄)
Picrasma quassioides Benn. ニガキ ニガキ科 Simaroubaceae ユクライケニ yukrayke-ni (yuk鹿-rayke殺す-ni木)、茎* 樹皮:煎じ汁を胃病薬。 根皮:皮を剥いで樹液を容器に留め、鹿狩りに使用。樹皮:煎じ汁で衣類を洗うと蚤がつかない。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(荻伏、様似、足寄、屈斜路、美幌、名寄)
Anemone flaccida Fr. Schm. ニリンソウ キンポウゲ科 Ranunculaceae プクサキナ pukusa(ギョウジャニンニク)-kina(草)、茎葉、(長万部、幌別、様似、他)�オハウキナ ohaw(汁)-kina(草)、茎葉、(鵡川)� *茎葉:乾したものを煎じて、産後の傷を洗った。 茎葉:汁の実にしたり、大量に採取し、天日で乾燥してえ、1年を通して利用した。普遍的に食べた山菜の一つ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 アイヌ民族博物館「アイヌと植物<食用篇>」 *アイヌ民族博物館ホームページ�北海道と樺太の和人は“フクベラ”と呼ぶ。
Adenocaulon himalaicum Edgew. ノブキ キク科 Compositae オイナマッキナ oynamat-kina,茎葉、(幌別)� 葉:ウルシにかぶれた時、炙って柔らかくして貼った。 腫物にも傷にも同様に用いた。乾かして煙草にもした。 *目の悪い時、手をもんで柔らかくして患部に貼った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疫病とその治療に関する研究」
Hydrangea paniculata Sieb. ノリウツギ ユキノシタ科 Saxifragaceae ラスパ rasupa (槍の柄と穂先をつなぐ棒)、茎、* 内皮:煎じて疥癬の患部を洗った。シャンプーとして利用した**。喉の病気に煎じて飲んだ。 茎:槍柄と穂先をつなぐ棒、火箸や煙草の煙管、仕掛弓の矢の柄や熊祭の花矢を作った。髄を抜いた茎:赤布を通して針刺しに利用**。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(胆振、日高、足寄、美幌、斜里、名寄) **福岡イト子「アイヌ植物誌」
Codonopsis ussuriensis Hemsley バアソブ キキョウ科 Campanulaceae ムク muk,根、(北海道全地) 根:焼いて食べたり、煮て油をつけて食べた。生でも食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Pinus pumila Regel  ハイマツ マツ科 Pinaceae トトヌプ totonup (<totorup <metot 奥山-or の所-o に群生する-hup 松)、* 葉:煎じて水腫病に用いた。果実:胃の薬として用いた。 果実�木質部:削ってお茶にして飲んだ**。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *茎(名寄) **更科源蔵「コタン生物記 I」
Stellaria media Villars ハコベ(コハコベ) ナデシコ科 Caryophyllaceae イハレムン i(それを=腫れを)ha-re(引かせる)mun(草)、茎葉、(幌別、礼文華) 茎葉:虫に刺されて腫れたところへ、塩で揉んで付けた。打ち身あるいは骨の痛みに、熱湯に浸して罨法した。産後の悪血に、蒸し温めて罨法した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Leucothoe grayana Maxim. ハナヒリノキ ツツジ科 Ericaceae アイネニ ayneni (ay矢-neになる-ni木)、茎、(長万部) 木:風邪や胸の痛むとき煎じて飲用。 木:箸材料。矢毒を調製するとき掻き屑(綿状の屑)を混入。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Lathyrus japonicus Willd. ハマエンドウ マメ科 Leguminosae オタマメ otamame (ota 砂浜の-mame 豆)、果実、(幌別):* 果実:煮て油を付けて食べた (白浦)。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *メナサル menasaru (menas 東-haru 食料)、果実、(鵡川)
Rosa rugosa Thunb. ハマナス バラ科 Rosaceae  マウニ maw-ni (ハマナスの実のなる木)、茎、(北海道、樺太) 木:削って温湿布する時のタオルのように用いた。*水浸出液で洗眼した。 果実:完熟した果肉は生食、未熟なものは茹でて魚油をつけて食べた。クロユリの根と一緒に煮て、すりこぎで潰し、油を混ぜて食べた。木:削って、煎じてお茶として飲んだ。 根:入れ墨の浸出液を作る時に用いた。果実:果肉を乾燥して貯蔵し、クマ祭りの時に用いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Elymus mollis Trin. ハマニンニク(テンキグサ) イネ科 Poaceae  ムリッ murit,茎葉、(幌別);ライムン ray (死)-mun (草)、葉、(白浦、 落帆) 全草:煎じて食傷に服用。 根:乾燥しておいて、風邪の時煎じて飲む。 葉:乾燥して糸や針を入れる容器を編んだ。笠やゴザ、葬式の時に死者を包む平紐を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Glehnia littoralis Fr. Schm. ex Mig. ハマボウフウ セリ科 Umbelliferae ポフ pohu,茎葉(幌別)、全草(白老) 浜ウペウ hama-upew,全草(浦河) 全草:酢みそ和え、甘酢漬、みそ汁の具、テンプラなどで食す。 岡田路明「白老のアイヌ文化に伝承される植物とその利用法」 *姉帯正樹他「アイヌ民族博物館研究報告第8号」
Ulmus davidiana Planch. japonica Nakai ハルニレ ニレ科 Ulmaceae チキサニ chi(我ら)kisa(こする*)ni(木)、茎、 (全北海道) 若枝:ネブトが出た時、噛んで付けてそれを破り、その後、 オオバコかカブラの葉を貼って膿を吸い出した。 樹皮から取った繊維:ゴザに模様を付けるため、織り込んだ。背負鞄や手提鞄を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *こすって火を出すの意味
Senecio cannabifolius Less. ハンゴンソウ キク科 Compositae イオンカクッタル ionka-kuttar (iそれを-onka風化させる-kuttar円棒状茎)* 葉:焼いた灰を湿疹につけた。葉茎:黒焼きにして犬の油で練って白癬につけた。 根:咽喉の痛みに煎じ液でうがいし、また、性病、子宮病、神経痛、関節炎の患部を洗った。 若苗:茹でて汁の具にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *茎、(名寄、近文)
Echinochloa esculenta H. Scholz ヒエ イネ科 Gramineae ピヤパ piyapa,種子、(幌別、平取) 種子:餅や酒を作った。粥にしたり、豆と一緒に煮た粥にして食べた。穀物の中で最も尊び、晴れの日の食料とした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 アイヌ民族博物館「アイヌと植物<食用篇>」
Lycopodium clavatum L. ヒカゲノカズラ ヒカゲノカズラ科 Lycopodiaceae  ホロケウキナ horokew (狼)-kina (草)、茎葉、(真岡、白浦) 茎葉:頭痛の時、患部に鉢巻きにし、また、束にして枕にした。 胞子:傷口に塗布した。 病魔除けに寝所の頭上に吊した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Trapa japonica Flerov ヒシ ヒシ科 Trapaceae  ペカンペ pekampe (pe水-kaの上-<unにある-peもの)、果実* 果実:茹でて皮を剥いて食べた。茹でた後、又はそのまま乾燥して貯蔵し、ギョウジャニンニクの葉やオオウバユリの根と共に、粥を作ったり、**混ぜご飯にした。 果実: **濁酒を作った。果実の採取にあたる前に、儀式(ヒシ祭)を盛大に行った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(北海道各地) **更科源蔵「コタン生物記」 <unは、発音が変化した意。
Chloranthus japonicus Sieb. ヒトリシズカ センリョウ科 Chloranthaceae イネハム ine(4枚)-ham(葉)、茎葉、(近文) 茎葉:乾かしておいてお茶にした。 福岡イト子「アイヌ植物誌」
Polygonatum humile Fisch. ヒメイズイ ユリ科 Liliaceae ヌペ nupe,根茎、(白老) キウ kiw,根茎、(美幌) 根茎:ゆでてから食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 岡田路明「白老のアイヌ文化に伝承される植物とその利用法」
Symplocarpus nipponicus Makino ヒメザゼンソウ サトイモ科 Araceae  シケレペキナ sikerpe (キハダの果実)-kina (草)、葉、(北海道各地) 若葉: *駆虫薬。 根:煮て小熊に食べさせた。葉:茹でて食べたり、乾燥させて保存食とした。 **乾燥物は水にもどし、豆や木の実と一緒に煮て食べた。 ***ザゼンソウの葉:春にブタの飼料にした。鹿や熊は喜んで食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」、 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」:両文献共にザゼンソウとしている。 **福岡イト子「アイヌと植物」 ***更科源蔵「コタン生物記」
Calystegia japonica Choisy ヒルガオ ヒルガオ科 Convolvulaceae キッテシ kittes,根茎、(幌別) 根茎:早春に掘り、そのまま煮て油を付けて食べ、あるいは刻んで飯に炊き込んで食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 ハマヒルガオ C. soldanella R. Br. (ピスンキッテシ:根茎、幌別)の根茎も同様に食べた。
Petasites japonicus Maxim. フキ キク科 Compositae コロコニ korkoni(korフキの葉-<kor 持つ-ni木)、葉柄、(北海道各地) 葉柄・花茎:ケガをした時、生のまま噛んで付けた。風邪の時煎じて飲んだ。根:はしかや流行病に熱さましとして煎じて飲んだ。 花茎:焼いて皮をむいて食べた。葉柄:焼いて皮をむいて汁の具や漬物にした。乾燥させて冬季の食糧とした。 葉:物を包む、拭う、栓や鍋にする、小屋(野宿)や雨衣にする等幅広い用途に利用。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 <korは、発音が変化した意。
Pachysandra terminalis Sieb. et Zucc. フッキソウ ツゲ科 Buxaceae ユクトマキナ yuktoma-kina (yuk鹿-<topa群-kina草)、茎葉、(名寄) 葉:腫れ物に葉を暖めて患部に巻いた。便秘や胃痛に葉を煎じて飲んだ。利尿剤として温湿布に用いた。性病にも同様に用いた。  茎・葉:風邪に単独で又はキハダの皮と共に鍋の中に入れ煮立てて、湯気の所へ衣類をかぶって発汗させた。産婦人科の病気に煎じて飲用。果実:唇の荒れにつぶして塗付。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 <topaは、発音が変化した意。
Kochia scoparia Schrad. ホウキギ アカザ科 Cenopodiaceae ハキ haki,茎葉、(幌別)�ヌンヌイェプキナ nunnuyep(箒)-kina(草)、茎葉、(沙流) 種子:炒ってご飯に振りかけて食べた。 枯茎:枯れた茎を束ねて箒にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *アイヌ民族博物館ホームページ�アイヌ語ハキは日本語の“箒”に由来する。 種子を加工し食用としたものはトンブリと称される。
Physalis alkekengi L. var. franchetii Hort. ホオズキ ナス科 Solanaceae チウクマウ chiukumaw[chi(我々が)uku(吹く)maw(漿果)]、果実、(幌別) 漿果:骨の痛むところへ潰して付けた。ひびやあかぎれにも潰して患部へ擦り込んだ。 漿果:女の子は球形の小袋を口に含み、鳴らして遊んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Magnolia ovobata Thunb. ホオノキ モクレン科 Magnoliaceae プシニ pus-ni (pus 矢筒-ni 木)、茎、(北海道各地) 種子:体が温まるので、リウマチ、神経痛、婦人病や風邪薬として煎じて飲んだ*。 果実、枝:野草料理を食べた後、鍋の中に枝や果実を叩きつぶして入れて煮立て、湯をお茶として飲んだ。種子:湯に浮かせてお茶として飲んだ*。 幹:矢筒、杓子、小刀の鞘や槍の柄をはじめ、色々な細工物を作った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *更科源蔵「コタン生物記 I」
Spiraea salicifolia L. ホザキシモツケ バラ科 Rosaceae ニタタシ nitatas (nitat湿地-<has灌木)、茎、(名寄) 茎:ほうきや、むしろを止める串の材料。鮭を開いて乾かす時の突っ張り串にもした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇 」 <hasは、発音が変化した意。
Sorbaria sorbifolia A. Br. ホザキナナカマド バラ科 Rosaceae セワシ sewasi,茎、(上川);スワシ suwasi,茎、(十勝、沙流、千歳) 木:風邪の時、鍋に入れ煮立った湯気で発汗させたり、煎汁を服用した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇 」
Angelica stenoloba Kitagawa ホソバトウキ セリ科 Umbelliferae キムンウペウ kimun(山)-upew,全草、(浦河) 全草:体がだるい、胃が重い、風邪をひいた、疲れた時などに陰干ししておいた全草を煎じてあるいは他の乾燥した薬草と混ぜて煎じて飲んだ。 姉帯正樹他「アイヌ民族博物館研究報告第8号」 別名“イワニンジン”
Maianthemum dilatatum Nels. et Macbr. マイヅルソウ ユリ科 Liliaceae キサルペオッ kisar (耳)-peot (べとべとする)、茎葉、(美幌、屈斜路) 葉:膿の吸い出しに用いた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Ligusticum hultenii Fernald マルバトウキ セリ科 Umbelliferae  チポコ chipoko,茎葉、 (樺太各地) 茎:煎汁は産婦に良いとされた。 茎:若い茎を生食。刻んでご飯に炊きこんで食べたり、乾燥させて冬の食糧にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Cornus controversa Hemsley ミズキ ミズキ科 Cornaceae ウトゥカンニ utukanni,茎、 (北海道各地)  材: *外傷に、刻んで煎じて粘液状になったものを布に浸して温罨法した。骨折時の副木にした。 材:イナウ(木幣)、普通はヤナギで作るが神に敬意を表する時にミズキを使う。鮭を殺す打頭棒。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *木下良裕「アイヌの疾病とその治療法に関する研究」
Lysichiton camtschatcense Schott ミズバショウ サトイモ科 Araceae  パラキナ para (幅広い)-kina (草)、葉* 葉:足の水疱を温包する。発汗剤。化膿しようとする挫創または腫張に生葉を当てて縛っておく。乳房炎に根を磨り潰して患部に塗った。生葉を貼って膿の吸い出しにした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *(長万部、虻田、有珠、幌別、穂別、名寄、真岡、白浦)
Actinidia kolomikta Maxim. ミヤママタタビ マタタビ科 Actinidiaceae チカプクッチ chikap (鳥の)-kutchi (サルナシ)、果実、(名寄) 茎:産前・産後・脚気などの身体のむくみに煎じて飲んだ。 果実:生食。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Laportea bulbifera Wedd. ムカゴイラクサ イラクサ科 Urticaceae カパイ kapay (kap皮部-hay繊維)、皮部から精製した繊維、(北海道各地) 茎:繊維をとり織物にした。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Lithospermum erythrorhizon Sieb. et Zucc. ムラサキ ムラサキ科 Boraginaceae ペウレ pewre (pe 汁-hure 赤い)、根、(足寄、芽室) 根:乾かして貯え、噛んで細かくし、犬・馬・熊の脂にまぜて火傷に塗った。感冒のため咽喉が痛む時、噛んでその汁を飲み干した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Fraxinus mandshurica Rupr. var. japonica Maxim. ヤチダモ モクセイ科 Oleaceae ピンニ pin-ni (pir傷-ni木)、茎、(北海道、樺太) 皮:入れ墨をする際、傷口を洗う薬液に用いる。焼いた灰を湯にといて足うらのマメの治療。 材:小熊を飼うオリや鮭を取る梁。舟の材料や薪。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Chamaenerion angustifolium Scop. ヤナギラン アカバナ科 Onagraceae キナポアハニ kinapoax-ni (kina草-poax子宮-ni木)、茎、(白浦) 茎葉:胃腸病に煎じて飲む。子宮病や消渇にも煎じて飲み、または局部を洗滌した。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Amphicarpaea bracteata Fernald subsp. edgeworthii var. japonica Ohashi ヤブマメ マメ科 Leguminosae "アハ aha 地下に結実した果実、(幌別、穂別、千歳) " 地下に結実した果実:早春に採取し、煮て油をつけて食べたり、米と一緒に炊いて食べた。 *乾燥して保存しておき、必要な時、水にもどして使用した。
Morus australis Poiret ヤマグワ クワ科 Moraceae トゥレプニ turepni,茎、(長万部、 虻田、 有珠、 幌別、白老、鵡川、穂別、 千歳)* 木:足の立たぬ病気に若枝とハコベの茎葉を鍋で煮てその湯気で身体を蒸し、煎汁も飲んだ。 果実:生食。飼熊が病気の時、食べさせた。 樹皮:入れ墨。 木:かんじきや弓の材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *トペンペ topempe (topen甘い-peもの)、果実、(名寄、幌別)
Phytolacca esculenta Van Houtte ヤマゴボウ ヤマゴボウ科 Phytolaccaceae トコンポ tokom(こぶ)po(指小辞)、根、(北海道全地) 根:乾かして貯えておき、水腫、脚気などに煎じて飲んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Paeonia japonica Miyabe et Tatew. ヤマシャクヤク ボタン科 Paeoniaceae オラプ orap,根、(名寄、芽室) 根:風邪の熱さまし、腹痛に単独で、あるいはフキの葉・イブキボウフウの根・クズの根などと混ぜて煎じて飲んだ。関節の痛みに噛んで付けた。耳痛には根を焼いて温布。 根:乾燥して貯蔵しておき、軟らかくなるまで煮て、それを刻み木鉢に入れて筋子と一緒に挽き、油を入れてかき回して食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Osmunda cinnamomea L. var. fokiensis Copel ヤマドリゼンマイ ゼンマイ科 Osmundaceae  ソロマ sorma,葉、(美幌) 葉柄:食用。 綿毛:子供達が鞠を作って遊んだ。 *ゼンマイやクサソテツも「ソロマ sorma」と呼んだ。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *更科源蔵「コタン生物記」
Aruncus dioicus Fernald var. tenuifolius Hara ヤマブキショウマ バラ科 Rosaceae オソマクトゥ osoma(大便)-kutu(筒茎)、茎葉、(樺太) 茎葉:下痢の時、茎葉の乾燥したものあるいは枯れたものを黒焼きにし、その粉末を臍の周囲や下腹部に塗った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Vitis coignetiae Pulliat ex Planch. ヤマブドウ ブドウ科 Vitaceae ハッ hat,果実、(北海道全地) 果実:コウライテンナンショウを食べて中毒した時、解毒剤として食べた。 若い葉柄:皮をむいて生食。巻髭:生食。果実:生食。果汁を発酵させて酒として飲んだ。果汁に海水を混ぜ、サンショウの葉を加え、マスの刺身などを浸して食べた。 茎:綱、手提げ袋や夏に履くわらじの材料。葉:陰干してタバコに混ぜて呑んだ。皮:洗髪用たわし材料。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Smilacina japonica A. Gray ユキザサ ユリ科 Liliaceae ペペロ pepero,根茎、(幌別);ケペロ kepero,根茎、(千歳) 根茎:秋に掘って、茹でて食べた。茹でたものを乾燥させて蓄え、冬に米、豆やギョウジャニンニクと共に炊いて油をつけて食べた。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
Cacalia hastata L. subsp. orientalis Kitamura ヨブスマソウ キク科 Compositae ワッカククッタル wakka (水)-ku (飲む)-kuttar (筒)、茎、(名寄)* 若い茎:フキと同様に処理して食べた。 成熟した茎:鮭を開きにして乾燥させる時の支棒。子供の遊び道具。**オオウバユリの澱粉の蒸焼き容器やストロー。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」 *ワツカクツタル wakka (水)-kuttar (筒)、茎、(沙流、天塩、上川) **福岡イト子「アイヌ植物誌」
Pteridium aguilinum var. latiusculum Und. ex Heller ワラビ ワラビ科 Pteridaceae ワルンペ warunpe,新葉のまだ開かぬもの、(幌別)�トゥワ tuwa,新葉、(長万部、様似、本別、名寄、近文) 地下茎:デンプンを採取した。 若芽:新葉のまだ開かぬものを灰汁で洗って刻んで汁の実にした。ゆがいてから乾かし、冬に使った。 知里真志保「分類アイヌ語辞典植物篇」
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